都立高一般入試問題分析

東京都立西高等学校

都立高一般入試問題分析

国語

漢字(読み) 漢字(書き) 小説文  論説文  現古漢融合問題
大問は例年通り5題で小問は26問、問題数は昨年度と変わらなかった。の漢字の読み書きは各4問。昨年度出題がなくなった四字熟語の出題は今年度もなかった。漢字の難度は昨年度より若干上がっている。小説文は、上野歩『お菓子の船』からの出題。記述問題では、昨年度までは心情の変化を読み取ることが明確に設問から読み取れる問題があったが、今年度は「なぜか」と問われ方が変化した。その他の問題の難度は例年通りであった。論説文は、松村圭一郎『旋回する人類学』からの出題。設問内容自体は「なぜ」や「どういうこと」、「論理展開」についてなど、オーソドックスなものであった。作文問題のふさわしい題名をつけるという指示も変化はなかった。ただ、課題文自体は今年度も抽象度が高く難解であるため、普段から文章を細かく読むと同時に、要旨を把握することを意識する必要がある。現古漢融合問題は、揖斐高『江戸漢詩の情景』からの出題。昨年度入試で出題された抜き出し問題が出題されないという変化があったが、言葉の意味を考える問題などその他の問題は例年通りとなった。他の都立自校作成問題校の融合問題で演習を積むことや、古文・漢文に読み慣れておくことで素早く解き進めることができる。全体としての難度は大きく変化はしていないが、とりわけ論説においては課題文の抽象度が高く難解であるため、普段から他の都立自校作成問題校の問題や難関私立校の問題で対策を行うことが必須である。

数学

小問集合  関数  平面図形  数論
今年度の問題構成は昨年度と同様であり、大問4問、小問14問であった。大問ごとの出題傾向も昨年度同様であった。は小問集合で、平方根の計算、二次方程式、確率、データの活用、作図の5問である。確率は例年通りさいころ2つの問題、データの活用では昨年度は中央値を利用した問題だったが、今年度は箱ひげ図を読み取る問題であった。は5問とも正解し得点源としたい。は二次関数の問題であり、〔問1〕はパラメータを利用して座標を求め、直線の式を出す問題。〔問2〕は三角形の面積を求める問題。ここまでは正解をしたい問題である。〔問3〕は面積比を利用して線分の比を求める問題であり、都立・私立の上位校の過去問を解いて訓練をしていた受験生であれば対応できた問題である。は平面図形の問題であり、近年は円の問題が多かったが今年度は平行四辺形の問題であった。〔問1〕②は三角形の合同の証明で、他の都立自校作成問題校の過去問も解き慣れておく必要があった。〔問2〕は点が移動したときに描く曲線の長さを求める問題であり、軌跡がおうぎ形の弧になることに気付ければ正解できた。は例年、他の学校のような空間図形ではなく、数論が出題される。具体的な対策を練ることは難しいが、与えられている条件をもとに解くことが出来る。今年度は〔問1〕の正答率は高く、〔問2〕〔問3〕の正答率は低いと思われるが、例年よりは解きやすくなっている。
例年と全体的な難度は大きくは変わらない。都立・私立の上位校の過去問を幅広く学習し、一つの問題に対し様々な解法を学習しておくことが合格への近道となるだろう。

英語

リスニング  対話文  長文読解  長文読解
大問4題構成は変更なし。リスニングを除いた小問数は昨年度2問に対し、今年度も29問。内容正誤問題が24点の配点で、4つの選択肢から1つ又は2つの英文を選択するなど、昨年度と傾向はほぼ同じだった。長文の文章量としてはが102行、が51行、が68行であった。では適文選択問題や文脈を踏まえた整序英作問題、要約した文章の空所補充問題などが出題された。では該当の英文が文章のどの空欄に入るかを問う問題や、整序英作問題などが出題された。では適語句補充問題、整序英作問題、40語以上50語以内の自由英作などが出題された。長文読解では、様々な分野に対して興味関心を向けておくことが得点力の向上につながる。日比谷など、その他の都立自校作成問題校の長文とテーマが重なる年もあり、他校の過去問も解いておきたい。の作文は「日本文化固有の製品や食べ物について」というテーマだった。リスニングを除き、大問3問それぞれを平均12分程度で解くスピードが要求されている。短時間で長文の内容を把握する必要があることから、語彙力のレベル向上を強く意識しながら多くの長文読解に取り組み、過去問を中心に難度の高い長文読解練習と速読の対策をしておく必要がある。

理科

小問集合  小問集合(レポート形式)  地学分野  生物分野  化学分野  物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。

社会

小問集合  世界地理  日本地理  歴史  公民  総合問題
は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。

国語

難度は昨年度と同程度。構成は例年通りだが、字数は昨年度よりも増え、全体の難度が上がった。作文以外の記述は大問3の1題のほかに、大問5に抜き出しの問題が増えた。
漢字は四字熟語からの出題がなくなったが、「バクエイ(幕営)」、「ソウカ(窓下)」など、受検生の語彙にはない漢字が出題された。論説文は平易な文章ではなく、そもそもの語彙力がないと容易には読み取れない内容ではあったが、選択問題は例年同様の形式だったため、落ち着いて処理する必要があった。小説では例年通り八十字の心情の変化を記述する問題が出題されたが、日頃の練習の成果が問われた問題であった。作文の出題形式は例年通り。

数学

全体的に解きやすい問題の構成。平均点は上がるだろう。大問1の作図、大問4の問3は難度が高い。それ以外は西高校としては解きやすいので、ミスなく確実に得点できるかがポイントであった。証明問題も昨年度より取り組みやすいので、部分点でもよいので得点したい。大問4ではあまり差がつかないので、大問1~3の出来で合否が決まるといえる。

英語

全体的に例年よりもやや易化。各大問の設問数も変化なし。受検生を悩ませる整序英作は、昨年度が2問であったのに対して、今年度は3問に増えていた。しかし、3問中2問は昨年度と比較しても易化していた。文整序の問題に関しても昨年度は不要な選択肢が1つ含まれていたが、今年度に関してはそのような選択肢はなく、こちらに関しても解きやすい問題になっていた。過去2年分の問題と比較すると、求められている語彙力が下がってはいるものの、一定量の知識に関する問題が出されていることもあり、例えばquite a fewなどの誤読しやすい表現やas a resultなどの重要な連語も、活用できるレベルで押さえておく必要がある。大問2の長文のテーマが日比谷高校と重なっていた。タイムリーな話題も含めてさまざまな知識をつけておくことも得点力の向上につながる。最後の大問4の問8の英作文は昨年度にない条件が3つ挙げられている。何と言っても、条件が明確に示されているのであればそれに正対させることが重要である。

社会

出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。

理科

問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。