都立高一般入試問題分析

東京都立新宿高等学校

都立高一般入試問題分析

国語

漢字(読み・書き) 小説文  論説文  現古融合文
大問4題、小問28問という構成だった。の漢字の読み書きは各4問。漢字の難度は読みも書きも例年通りであった。小説文は、木内昇『かたばみ』からの出題であった。小学校教員を務める主人公の悌子、夫の権蔵、そして将来有望視されていたものの野球大会の決勝で足を怪我してしまった清太、3人を軸とした物語が描かれている。設問が合計7問で、全問記号選択の形式であった。論説文は、池上俊一『歴史学の作法』からの出題であった。歴史の捉え方ならびに考え方について述べられている。文章量が減少しているものの、文章そのものの難度は低くない。また、最後の自由記述問題では、出題の切り口が波線部中の語句からとなり、これまでにあった文章全体における指定語句についてという出題の切り口とは異なるものであった。取り上げられる語句自体の抽象度は例年通り高い。現古融合文は、小川靖彦『万葉集と日本人』からの出題であった。万葉集の歴史をテーマとしている。これまで熟語の構成及び助詞の識別等といった文法問題が出題されていた年度もあったが、本年度ではそれらの出題がなく、文章内容を問う問題以外では現代仮名遣いを記述する問題が1問出題された。

数学

小問集合  二次関数  平面図形  空間図形
大問4題、小問16題の問題構成。例年とほぼ変わらないが、で出題されている平面図形の証明問題(10点)が、今回は記述ではなく、選択穴埋め形式(1問1点×10)へと変更されている。は小問形式で、平方根の計算、連立方程式、式の値、確率、中点連結定理を利用した平面図形、そして作図である。ここ数年続いた高レベルの作図は出題されなかった。いずれも標準レベルの問題であるが、ここは慎重に解き、満点を狙いたい。他の都立自校作成問題校のはすべて解き切って本番に臨んでほしい。は関数からの出題。本質的には三角形の線分比と面積比の理解が問われている。前期日曜特訓から何度も練習した分野である。解きやすい問題ではあるが、日頃から制限時間内に解く訓練が必要である。は平面図形で、〔問1〕・〔問2〕は正三角形の折り返しがテーマで頻出問題といってよい。〔問3〕の証明問題は誘導をもとに丁寧に解いていき、正解にたどり着きたい。結果のみの暗記ではなく、日頃の授業から、なぜその定理が成り立つのか、公式を自ら証明する学習習慣をつけておこう。は二つの立方体を組み合わせた問題。昨年度のような時間内に解くのは不可能と思われる問題ではない。いずれも立体の基本的な性質をおさえておけば完答できる水準の問題である。類題を前期および後期の日曜特訓、また直前特訓で扱っており、繰り返し解きなおすなど復習を十分にすれば本番のテストでも役に立ったと思われる。

英語

リスニング  長文読解(対話文) 長文読解(論説文) 長文読解(物語文)
今年度はリスニング、対話文1題、論説文1題、物語文1題と、昨年度の大問構成と変わらなかった。語数も全体で50語程度減っているため、その点ではやや易化した印象がある。大問別にみると、は昨年度出題された文中での文整序問題がなくなったかわりに、文中での語句整序問題になった。さらに、今年度は〔問1〕で、対話の内容をメモでまとめ、その文中に語句を埋めさせる問題が増えた。は例年通り論説文で、空所語句補充が1問、下線部の意味と内容が合う絵を選ばせる読解問題が1問、語句整序問題が1問、内容一致問題が1問と変化はない。内容については、昨年度の「二次元コード」を扱った題材に対して、今年度は「ローマ数字」についてという馴染みのない内容であったため、受験生にとっては扱いにくかったと思われる。は例年通り物語文で、7問構成も例年通りであった。下線部の意味を問う問題が昨年度1問に対して今年度は3問になり、内容一致問題が1問で昨年度と同じ、それ以外は空所補充問題となっている。いずれも内容の前後関係で答えを導き出せる問題となっており、例年通り解きやすくなっている。難度は例年通りだが、長文3題を制限時間内に高い精度で処理しなければならないため、時間配分を考えながら解き切る力が求められる。特にの馴染みがない題材については、解答の手がかりになる内容の位置やルール、条件などを論理的に整理しながら読み解く能力が求められた。こういった問題に対する訓練は、過去問を制限時間内に解いた後に、時間を取って和訳を参考にしながらでも論理構成を確かめながら読んでいき、最後にもう一度英文を音読し、文脈をたどりながら読んでいくという訓練をする必要がある。

理科

小問集合  小問集合(レポート形式)  地学分野  生物分野  化学分野  物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。

社会

小問集合  世界地理  日本地理  歴史  公民  総合問題
は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。

国語

全体的にやや易化したと言える。出題形式や問題数に大きな変化はなし。
漢字の読み書きは例年通りの8問だが、読み取りも書き取りも易化し、日頃の勉強の成果がそのまま表れるような問題であった。
文学的文章では、小問数が昨年度から1問増えて7問に。心情理解に関する問題が大半を占めた。論説文や現古融合文の問題は難度や出題形式ともに例年通りであったが、作文は昨年度よりも書きやすいものであった。

数学

全体として難度は下がった。大問1は計算問題が1問増えて全5問から全6問に増えたが、問題の出題傾向に大きな変化なし。大問2は関数と図形の融合問題で変わらず、途中まで誘導のある計算過程を記述させる問題も例年通り。大問3は円に内接する三角形・四角形を基本とした問題になった。図形の証明問題の穴埋めは例年通り。大問4は空間図形。昨年度は問2の小問が3問だったのが今年は2問に減った。問2の2問は平行四辺形や合同な直角三角形を発見することが必要で難度は高かった。

英語

昨年度と比べ、文章量や設問構成に大きな変化はない。対話文読解・長文読解では、他の自校作成問題校と同様に、対話や本文の流れに合わせた適語句補充・適文補充問題が多く出題されている。全体的に語数はやや減っており、注の語句が増えたことにより受検生にとって取り組みやすくなったように感じるが、それでも時間内に大問3題を解き切るのは困難だったと思われる。特に大問3の2次元コード(QRコード)の開発秘話に関する問題の難度が高かった。大問2と大問3で出題された整序問題を比べると、大問2の方の難度がかなり高いため、この問題で一定の時間を費やしてしまった受検生が多かったと思われる。自由英作文(35語以上45語以内)は昨年度と同様に、本文の内容を理解していなければ書けないという問題ではなかった。

社会

出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。

理科

問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。