都立高一般入試問題分析

東京都立立川高等学校

都立高一般入試問題分析

国語

漢字(読み) 漢字(書き) 小説文  論説文  現古融合問題
今年度は例年同様大問5題の構成で、記述問題が論説文の中で2問出題がありつつ、全体としては昨年度の傾向が継続した出題となっていた。は漢字の読み書きで、普段目にしない漢字で取り組みにくいものが一部ある。四字熟語は読みのみの出題となったものの、書きまでしっかり練習しておきたい。逸木裕『風を彩る怪物』は、音楽のプロを目指す主人公が、オルガン工房のプロジェクトに関わる様子を描いた小説である。設問は、〔問1〕~〔問5〕までと例年より1問少なくなり、大半が選択問題だった。文章表現を問う問題も例年出題があるため、同形式の類問に触れたい。の論説文は、引き続き文章A・Bの2題構成となっている。文章Aの出典が池上嘉彦『記号論への招待』、文章Bの出典が石黒圭『日本語は「空気」が決める 社会言語学入門』で、〔問1〕〔問2〕〔問4〕〔問6〕が記号問題である。〔問3〕が60字以内の記述、〔問5〕が記号選択と50字以内の記述で構成されており、昨年度の記述量と比べると減少している。段落ごとにどのような内容を論じているか、論の方向が変化していないかを意識することで読み取りやすくなる。齋藤希史『漢文ノート――文学のありかを探る』は、例年出題の多い和歌ではなく、漢詩が登場する中国の勧学文に関する考察をした文章だった。漢詩の解釈をしながら筆者の考察を読み取る必要があり、文法問題として助動詞の見分けの出題もあった。
国語については早い段階で漢字練習と並行して様々な文章に触れて、意味を調べつつ語彙を増やし、中3の夏以降は都立自校作成問題校の過去問に取り組み、数をこなしたい。

数学

小問集合  関数  平面図形  空間図形
大問は4題、の問題数が1問減り、4問となった。これによりの配点が例年より高くなり、細かなミスが許されない入試となった。は小問数、配点ともに例年通りの問題となった。は小問集合で平方根・連立方程式・確率・作図の4問であった。前述の通り配点が上がり、作図以外の三問は5点から6点となり、作図は5点から7点となった。計算間違いをなくすためにも、日々計算問題を解く必要がある。作図については、円周角の定理を2回利用した問題であった。は関数からの出題。〔問1〕は基本的な問題であるため、ミスは許されない。〔問2〕は関数と三平方の定理の融合問題となっているが、与えられた条件から三平方の定理を利用することは判断できるため、冷静に取り組みたい。〔問3〕は回転体となっており、練習を積んでいるかどうかがカギとなった。は直線図形であった。〔問1〕は角の二等分線を使用し、二等辺三角形を見つけ出す問題。〔問2〕は証明問題に癖があり、文字を使用して角度を求めていくような形式であるため、本校の問題だけでなく、他の都立自校作成問題校や難関私立校の問題を解いて対策をする必要がある。〔問1〕が証明、〔問2〕がその利用であったため、証明問題が解けないと〔問2〕には手が出せなかった。は空間図形。〔問1〕は基本的な問題である。〔問2〕は表面上の最短距離、〔問3〕は求積問題であった。〔問3〕の方が比較的解きやすく、〔問2〕の方が難度が高いため、〔問2〕を飛ばし、〔問3〕へ進むべき問題であった。

英語

リスニング  対話文  長文読解
大問は3題で、リスニング以外の小問は19問であった。出題形式は昨今ほぼ変化がない。は岩石や地熱エネルギーに関する対話文。会話の流れに合うように英文・適語を補充する問題、対話の流れを踏まえて下線部の内容を問う問題、整序英作問題、内容真偽の問題が出題された。また、の最後には、どのような種類の環境にやさしい製品を人々に勧めるかについて、理由とともに40語~50語以内の英文を書かせる英作文が出題された。は過去にも生物分野、AI、太陽系、化学反応等が出題されており、理科的知識を踏まえた対話文が出題される傾向がある。は島で1年間生活をした少年の成長を描いた話であった。適語補充、整序英作、対話や文章の流れを踏まえ下線部の内容を問う問題、内容真偽の問題が出題された。
本校や他の都立自校作成問題校の過去問演習を通して、読解スピードと正確性を高めることがまず必要である。特には理系の内容の文章をもとに出題されることが多いため、都立自校作成問題校のなどを解いて、理系のテーマの長文問題に慣れていくことをおすすめしたい。また、で出題されている整序英作については難度が高いものではないため、確実に得点していくために、夏までに文法事項の定着をはかることは必須である。

理科

小問集合  小問集合(レポート形式)  地学分野  生物分野  化学分野  物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。

社会

小問集合  世界地理  日本地理  歴史  公民  総合問題
は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。

国語

難度は例年並みからやや難。
小説では、登場人物が文章にもたらしている効果を答える問題が目新しい。論説文は昨年度に引き続き2つの文章を読んで答える問題。記述量は減少傾向。
知識問題では敬語に関する事項が出題された。記号選択問題は典型的な出題パターンが多いので、傍線部から丁寧に本文を追えば解ける内容が多い。

数学

昨年度はかなり難しかったが、今年は以前のレベルに戻り、取り組みやすい出題構成であった。大問1は難度が低く、得点しやすかった。大問2の問2では例年同様、求める値が複数あるので、注意深さが必要。問3では線分を回転させる問題。類題を解いた経験の有無により差がつく問題といえる。大問3の平面図形では、線分の長さの和に関する証明する問題で、都立型では珍しいタイプの出題であった。大問4の空間図形はできれば二問は正答したかった。

英語

昨年度と比べ、文章量に関しては大問2の対話文で少し減ってはいるが、その分大問3の長文で増えているため総量に変化はない。同様に、設問形式や傾向にも大きな変化は見られなかった。今年度も創造理数科が出来る前の解きやすい問題のレベルまでは戻らず、昨年度同様の難度であった。整序英作の難度は創造理数科が出来る前後で大差はなく平易である。大問3の対話文が理科的要素を必要とする読解が減り、解きやすくなったのではないだろうか。大問4の物語文は昨年度同様に、体験とそこからの学びに関する内容。スピード勝負であったことに変化はない。立川高校の過去問をかなりさかのぼって演習をすると、立川高校の英語の難度を見誤ってしまうので注意が必要である。

社会

出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。

理科

問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。