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2.4 日刊ena小学部 -24年度都立中適性検査総体講評-

投稿日: 2024.02.4 3:52 pm

こんにちは、ena小学部の青木です。

 

激戦から一夜明け、小6の皆さんは久しぶりの静かな日曜日を過ごしている人も多いと思います。

また、中には今日、明日も戦いの受験生もいると思います。もうひと踏ん張り、最後までやり切りましょう。

 

さて、例年のように、各都立中・国立中の適性検査分析速報がアップされております。

今年はどうだったんだろう、という方はぜひご覧になってみてください。

適性検査分析

 

学校ごとの情報は上記ページをご覧いただくとして、

ここでは都立中総体、全体的な傾向について簡単に書いてみたいと思います。

 

①適性検査Ⅰの難化

共同作成から各校の独自作成まで、概ね難化傾向でした。

難化の仕方にも特徴があり、問題と問われ方ではなく、文章抽象度の上昇から来るものが多かったです。

文章抽象度が上がっている要因は、題材の変化。哲学の分野までつながる言語論などが出題されました。

割と出題内容がなんでもありな中学入試の世界(私立中)、ただ、それでもあまり出題されることが少ない単元やジャンルというものがあって、哲学に関わる文章は私立中入試の国語でも出題頻度は高くありません。概念的に小6の子たちに理解できないものとなると、もはや勉強ができるできないとは別の段階で解くことができない問題となるからです。例外的に出題されるとしても、初めから子どもたち向けに、子どもでも読めることを想定して書かれているもの。通常の新書として売られるような哲学の文章は、むしろ高校入試においての定番でした。

が、今回24年度はそういう概念とつながりうる文章などが出題されたり、あるいはこちらも高校入試の定番の融合文(現代文と古文や詩歌が複合した文章。短歌と、それについて論じた文章を合わせて書かれているものなど)が共同作成で出題されていたり、

文章の時点で受検生たちの思考を止めるようなものが多く出されました。

大体の学校が、適性Ⅰについては低得点勝負となるでしょう。

 

②適性検査Ⅱの易化

適性検査Ⅰが難化した、というのが割と歴然であったのと同様に、適性検査Ⅱが易化したのも、ざっと目を通すだけでも明らかでした。

そう判断できる主な要因が二つあり、一つは単純に問題数が減少したこと。

大問3題構成で、大問1は算数系、大問2は社会系、大問3は理科系、ここまでは共同作成のシステムが導入されて以来全く変わらず踏襲されています。その大問の中の小問数が、以前は3題ずつだったものが、近年は2題ずつとなっている、という変化が以前あったものの、これもすでに複数年続いているスタイルです。しかし、問題はさらにその中身、小問2題が、実際はその中で枝問で2つに分かれている形で出題されていました。「問題1」とあって、そのあと(1)(2)とあるようなやつです。おそらく、3×3の9題構成だったものが廃止された理由は45分という解答時間に対して問題数が多すぎ、事実上捨て問を誘発する構成となっていたことがその一つであろうと推測されますが、ふたを開けてみればそれを改善しうる変更だったはずが、その目的が達成されない状態が数年続きました。

これに対して、今回24年度の問題では枝問が出題されず、大問1つにつき小問2つずつ、とシンプルな構成となり、すべての問題に十分手を出して正解しうるものとなりました。これまでは事実上すべての問題を正解にたどり着くまで考えると45分では到底終わらない、というものであったため、たとえば特定の教科が得意な受検生は、その教科の分野で解ききることが難しいものが出題されると一気に不利になる、という構図がありましたが、今回はそういったことがなくなり、満遍なく力を発揮できるよい変更だったといえます。

さて、もう一つの要因は、問題の「中身」の構成が前年23年度と近いものであったこと。ここでいう中身とは、それぞれの問題で正解するために求められる力が何か、ということ。広い意味で言えば、都立中の適性検査というもの自体が、思考力や表現力、判断力などを問うものである以上、どの年度もどの問題もそれは通底しているわけですが、より詳細に見ると、一つ一つの問題は異なる力が問われています。例えば、与えられている資料から関連性を見出してある現象の原因として考えられるものを表現する問題、すなわち実験結果の考察力などを問う問題もあれば、与えられた指示を正しく理解して、作業をしたうえで答えを探り当てるような処理力を問われる問題もあります。こういった意味での問題ごとの問われる力の、適性検査Ⅱ全体の中での配置のされ方が、24年度は23年度と極めて似通っていました。このため、23年度を含めて十分に練習を積んできた受検生ほど解き進めやすい、事前の学習量で結果が分かれる問題だったといえます。

この二点により、24年度の適性検査Ⅱはこれまでよりも易化した、同時に、実力がこれまでよりも正確に計れる良い問題でした。

 

③適性検査Ⅲの易化

適性検査Ⅲは、実施する学校がすべて独自に作成する問題であるため、適性1適性Ⅱと比して、総体的なものをとらえにくいものではありますが、概ね易化の傾向でした。学校ごとに見た際にも求められる力が大きく変化した、ということはあまりなく、適性Ⅱ同様、事前の準備の量が結果を左右しうる問題だったといえます。

 

以前のような爆発的な状況と比べれば、年々減少する倍率により都立中への入学しやすさは数字上増していると言えるものの、

十分に勉強をしてきた者たちの勝負である以上、気軽に受けて合格できるようなものではありません。

今回受検した子たちも、これまでの受検生と比べて勉強量が少なかった、ということは全くありませんが、

今回のような事前の準備の差で点数が分かれる問題が出される以上は、

倍率の漸減が続いたとしても、やはりしっかり勉強を積み上げていかなければ合格を勝ち取れない戦いであることは間違いないでしょう。

そして、enaの子たちがそうして2月3日を迎えて、その延長線としての都立中生としての歩みを進めてくれるうちは、

都立中の倍率の減少は、それぞれの学校の進学実績や学校の中の学習の質への低下へつながるということもないはずです。

 

ena小学部 青木

 

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