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2024年度適性検査分析速報-立川国際中等教育学校-

投稿日: 2024.02.3 10:00 pm

2024年度 立川国際中等教育学校 適性検査分析速報

こちらの記事の公開日時について

2月13日の11:45ごろまで、こちらの記事は公開日が1月31日となっておりましたが、

これはこの記事のスペースを同日に記載し、

2月3日夜時点で問題を分析した内容に更新する、という処置を行ったためです。

事前に学校様やその他の箇所から問題をena側が入手していた、などということはございません。

誤解を与えてしまい申し訳ございません。

ena小学部 青木繁和

 

 

適性検査Ⅰ

【出典】

戸谷洋志「SℕSの哲学 リアルとオンラインのあいだ」。(創元社刊)

【出題形式】
4000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2問、作文問題1問の例年と変わらないスタイルですが、昨年に比べて文章量は2倍近く増えました。また、ここ2年姿を消していた作文の条件が再登場しました。読解問題の字数は合計最大105字、作文の最大字数が460字となり、昨年よりは書く分量がやや減少した形です。
テーマは「インターネット上で個人の好みに合った情報が自動的に選択される仕組み」についての説明と生命の予見不可能な存在であることを対比させて「人間は予見不可能な創造的進化を遂げる」ものであることを述べています。SNSなどで同じ動画を見ても、それぞれの感じ方は個性によって異なるという筆者の考え方がとらえられれば難しい内容ではありません。

 

〔問題1〕 指示語の内容を読み取る問題 60字以上70字以内
「このような考え方」とはどのような考え方かという指示語の内容を読み取る問題です。直前に「そのパターンのなかに『私』を位置づけることで、『私』の行動を予測することがはじめて可能になるのです」とあり、この部分を利用することになりますが、「このパターン」の内容をこの段落の直前の段落にある「人間が好きなものには一定のパターンがあり、そのパターンを学習すれば、その人間の行動は予測できる」という部分とあわせてまとめることが肝要です。傍線部の前の段落だけに目がいってしまうと必要な内容をすべて盛り込むができません。制限字数との関係で何を書くべきかを素早く決める必要がある問題でした。

 

〔問題2〕 本文の表現の内容を問う問題 25字以上30字以内
「具体的な姿を捉える」とは世界をどのように見ることかを本文の表現をもとに言い換える問題です。傍線部では「そうした説明は~その具体的な姿を捉えることにはなりません」と書かれており、「そうした説明」では「具体的な姿を捉える」ことにはならないので、「抽象的に眺めてなされるもの」ではない内容が解答となります。この段落の直後に「具体的に眺める」とあり、この内容を説明している部分を探していきます。その内容には「あるできごとが予見不可能である」「偶然に起こる」ということが示されているので、これにあわせて解答をまとめます。字数が短いので前述のキーワードを入れて解答を作成することと、その後にある「人間」の事例が「創造的進化」という表現で述べられており、設問に関係は深いものの「人間」という限定的なものを扱っているため、この解答に盛り込むのにはふさわしくないことに気づく必要があります。

 

〔問題3〕 作文問題 400字以上460字以内
書くべき内容は「人間はどのような存在であると述べられているか」「筆者の考えを学校生活においてどのように生かせるか」の2点です。条件と注意にしたがって書けばよいので、受検生にとっては取り組みやすいと感じられたと思います。
最初の「人間はどのような存在であるか」はベルクソンの言葉を引用した文章の後半部分に「人間はあくまでも生命であり、単なるモノではない」とあり、「生命である以上」「予見不可能な創造的進化を遂げる」とあります。また、その後の段落に「時間の経過が私たちの存在を、常に新しいもの、別なものに変えていく」とある点にも注目して、「人間は単なるモノではなく、時間の経過によって新しいもの、別なものに進化する予見不可能な創造的進化を遂げる存在」という形でまとめることができます。
一方、この考え方を学校生活の具体的な場面を挙げて考える必要があります。ここでは「時間の経過によって、新しいもの、別なものに変わること」「予見不可能な創造的進化を遂げる」などの面から、場面を想定します。「学校生活の中で毎日あいさつをする場面」によって「前の日にはいやなことがあって落ち込んでいた気持ちも翌日にはあいさつをすることで前向きになれる」など具体的な場面をいかに思いつくことができるかがポイントになります。

 

適性検査Ⅱ

【大問1】デジタル数字を題材にした問題
大問1は前年度同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものでした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度になっていました。

〔問題1〕マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、できるだけ早くすべての作業を終わらせます。それぞれ作業にかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。

〔問題2〕ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作」「マグネットを取る操作」「数字の書かれたボードを180度回す操作」「2枚のボードを入れかえる操作」を組み合わせて考えます。回転と入れかえをいかに効率よく使えるかがカギとなりました。

 

【大問2】公共交通機関の利用について考える問題

令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。

〔問題1〕公共交通機関の利用割合が偏っている理由を、所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。出題者側が想定している解答の分かりやすい、平易な問題でした。

〔問題2〕「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数資料を組み合わせながら説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。参考にしなければならない資料は多いものの、こちらも解答の方向性が明快で、平易でした。
会話文や資料が過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であるため、2問とも難易度は高くありません。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。

 

【大問3】「まさつ」について調べる実験を題材にした問題
ここ3年連続していた、小問が2問あり、それぞれに設問が2つある実質4問の問題構成から一変、小問が2問、設問も1つずつの実質2問構成となり、問題量が大幅に減りました。2問とも記述の要素を含みますが、分量がそれほど多くもないため、単純に負担が減ったと考えられます。実験結果の考察が中心で、計算が必要な問題はありませんでした。

〔問題1〕は、ペットボトルのキャップにつけられたみぞのまさつによる効果を、モデル化した実験で確かめる問題です。実験の内容そのものは結果も素直で分かりやすいものではありますが、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで完全な解答を書く観点を持たずに、ぱっと解答をしてしまうと、要素が不足して減点となりうる、問題文の読解力で点数の分かれる問題でした。

〔問題2〕は、斜面をすべり下りる物体の摩擦力が、接地面の素材にどのような影響を受けるかを、実験から明らかにする問題です。複数の条件が設定されているので、対照実験の考えを使うことが必要になりました。実験の内容そのものは比較的分かりやすいものであったため、対照実験の仕組みの理解とそれを言語化できるかどうかが得点の肝でした。

 

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