適性検査Ⅰ
室町時代の『一寸法師』の評論文を題材にした問題
本年度の東大附属中の適性Ⅰについては大問1つのみの構成となっており、合計小問数も8問と、昨年度と比べ問題数も減り、さらに問題としては基礎的なものが多い構成となっております。出典は大橋治さんの『古典を読んでみましょう』でした。問1は漢字の書き取り問題が3つ出ていましたが、「はたらく」「ふつごう」「いんさつ」でした。ただ、「いんさつ」は問題用紙の表紙に「印刷」と書かれているので全員加点の措置が取られたようです。問2、3、4は鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代に活躍した人物と、それぞれの時代の歴史的建造物のある都道府県を選択肢から選ぶ、もしくは記述する問題で、人物は藤原道長、源頼朝、足利義政、など教科書レベルの人物が登場し、基礎的な問題と言えます。問5は記述問題で、室町時代の一寸法師と、平安時代の価値観を説明する文章が出てきて、共通点を読み取る問題でした。こちらは都に出てきた役人や有力な農民が活躍することで権力を持っていくことがあったという事が読み取れますが、本文や資料をそのまま書き抜くと不自然な解答になるので受検生自身で考える必要があり、やや得点が割れる問題といえます。問題6は室町時代後に起こった戦いが何かを4つのうちから2つを答え、またその共通点を記述で答える問題でした。平治の乱。長篠の戦い、西南戦争、壇ノ浦の戦いが絵図とセット出てきました。西南戦争、長篠の戦どちらも銃を用いている様子が絵図から見て取れるので、そちらを根拠に答えるべきと考えられる基礎的な問題でした。問題7は文章全体で述べられている考え方とは「異なる」ものを選ぶ問題でした。紛らわしい選択肢が多く、注意深く読まなければ間違えてしまうため、比較的点差が付く問題と言えます。同様に問題8も、点差が分かれるような問題と言えます。まず、資料に書かれている「質素倹約、謙虚さ、人との輪を大切にすべきという儒教の影響」また、「因果応報という仏教的な考え方の影響」が室町時代の一寸法師にあるかを答えますが、本文に「一寸法師はやりたい放題ですが、だれにもとがめられず、めでたし、めでたしで終わります」とはっきりと書かれていることから、仏教の影響は受けていないと考えられます。また、⑵では現代でメジャーな一寸法師のストーリーと、室町時代の一寸法師のストーリーを比べて、それぞれ子供たちにどのようなことを伝えようとしているのかを作文で書いて答えます。ただし、本文で触れられている「御伽草子」も子供を教育する目的で書かれているとしたら、という条件付きの作文です。どちらも最終的には活躍して、それが認められて一寸法師が出世するというストーリーですが、室町時代の一寸法師は他人を出し抜いて出世を狙っていくことも必要なんだという事が答えるべき内容だと読み取れ、現代の一寸法師では、まじめに努力を重ねることが大切なんだという事が読み取れます。室町時代の一寸法師はもともと「教育的」には書かれていないので、その部分の表現が難しいため、ここで得点の差がつくとみられます。全体的に見て落としてはいけない問題と、点差がつく可能性がある問題がはっきりと分かれていますが、適性Ⅱや実技の難易度を考えると、全体的にしっかりと得点しておきたい問題でした。
適性検査Ⅱ
第1問 理科の基礎知識を問う問題
問1~問3は、モビールを題材にしたてこのつり合いを問う問題です。問3では支点を特定する問題が出題されましたが、図にふられた目盛の値が利用できない点に注意が必要でした。問4~問6は、電気回路の成立を問う問題でした。問6はやや難度が高く、差のついた一問と言えます。令和5年度にも電気回路に関する問題が出題されており、出題者のこだわりのある分野ではないかと推測されます。問7は鏡のうつり方に関する問題でした。ふだん外を歩いているとき、T字路でカーブミラーを見かけたことがあると思います。この問題では、カーブミラー越しに映るものの姿について考えることが求められました。4択問題ですが、光の進み方についての理解があれば正解できた問題です。
第2問 地図を題材にした、算数の基礎知識や計算力を問う問題
問1,問2は、トラックのレーンを題材にしたおうぎ形と長方形の複合図形に関する問題です。計算結果を四捨五入して小数第2位まで求める問題なので、計算力が試される問題です。問3は単純な割合を問う問題でした。過去2年、割合の計算が頻出でしたが、今年も1問出題されました。学校側は確かな割合の計算力を求めていると考えられます。問4は複合図形の面積を求める問題でしたが、定規を用いて長さを自分で調べることが要求されました。全体を囲って求める方法と、分割して求める方法が考えられますが、コンパスを用いた正確な作図能力も問われたので、差のつきやすい一問と言えます。問5では、問4を前提にして縮尺の処理ができるかが問われました。縮尺は相似比を「比」または「分数」で表したものであり、面積比は相似比の2乗になるという知識と、その処理が問われています。令和5年度にも相似比と面積比の理解が問われており、この点も東大附属の出題傾向通りとなりました。問4,問5の出来で差がついたと予想されます。
第3問 分数を題材にした、数論に関する知識の利用方法を問う問題
問1,問2は確実に得点しなければいけない問題と言えます。地道に書き出すことでも正解すること
ができますが、2と3と5の倍数を取り除けばよい点に気が付けば迅速に正解にたどりつけます。問3は該当するものをすべて探し出す問題で、今年度の問題で最も難度が高い問題でした。受検生なら必ずと言っていいほど扱ってきている、ある分数を単位分数の和で表す問題で、調べ上げる作業が求められました。分母の24を素因数分解すれば、答えとなる値を絞り込むことができます。
実技検査
今年度の実技検査では、2つの作業が要求されました。直方体の展開図を組み立てる作業と、出来上がった直方体を【きまりと注意】で示された<たけのこ包み>という方法で包む作業です。
まずは直方体の展開図を、与えられた条件をもとに作成します。次に、それをハサミで切り抜いて直方体を組み立てる作業に移ります。作業自体は難しくないので、長さの正確さ及びセロハンテープによる貼り付けのきれいさが検査の大きな項目になったと考えられます。この直方体の出来が、次の作業の<たけのこ包み>の出来にも影響します。
<たけのこ包み>とは、贈り物などを包装するときの包み方の一種です。作業方法が言葉と図で示されているので、これにしたがって包んでいきます。【きまりと注意】に、「折り目が残ってもよいこと」、「仕上がりが美しくなるようにすること」が挙げられているため、検査の項目は「折り目の仕上りの美しさ」だと考えられます。作業方法がかなり詳細に示されているため、比較的平易で合ったと言えます。
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