ena高校部 国立

現代文得点力アップのための「設問読解力養成講座」第3回
コメント数:0 投稿日:2025/05/22 17:06:53
現代文担当の大島です。
今回の問題は2025年度共通テスト第1問です。
早速始めます。
問2 傍線部A「観光地住民の『戦略』は常に綱渡りである」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
傍線部を見たときに考えることは以下の3点。
①不足情報
②得られる情報
③A=Bの成り立つ理由
これだけでピンとこなかった人は、
を復習してください。
今回の傍線部は「観光地住民の『戦略』は常に綱渡りである」です。
①から③の視点で考えてみましょう。
①不足情報について
・「観光地住民の『戦略』」の内容とは?
・「綱渡り」とは?
②得られる情報について
・「観光地」の「住民」がいれば、「観光地」に来る「観光客」もいる。
③A=Bの成り立つ理由
・「観光地住民の『戦略」」=「常に綱渡り」というイコールが成り立つ理由を考える
③を深掘りします。
A観光地住民の「戦略」
=
B常に綱渡り
A=Bの成り立つ理由を考える場合は、把握しやすい方から考えるのが基本です。
今回の問題は「戦略」から考えます。
というのは本文の6行前に同じことが書かれているからです。
引用します。
「観光者が期待する(押しつける)イメージに適合的な役割を観光地住民が再演することは、観光という荒波から自らの生活文化を守るためのホスト側の『戦略』でもある」
この文から「観光地住民の『戦略』」がわかりました。
すなわち、「観光者が期待するイメージに適合的な役割を」「再演すること」です。
さらに、この「戦略」は「観光という荒波から自らの生活文化を守る」という目的のために行うものだということもわかりました。
最初のA=Bの図式に肉付けします。
A観光地住民の「戦略」
・観光者が期待するイメージに適合的な役割を再演すること
・観光という荒波から自らの生活文化を守るためのもの
=
B常に綱渡り
あとは、なぜAの内容が「常に綱渡り」になるのかを調べていきます。
まずは、「綱渡り」という言葉の意味です。
「綱渡り」をうまくやるのは大変ですよね。
ですから、以下の意味が考えられます。
・危険を犯して物事をすることのたとえ
・順調に進んでいく見通しが立たないようなことをすることのたとえ
観光という荒波から自らの生活文化を守るために、観光者が期待するイメージに適合的な役割を再演することに伴う危険ってなんだろう?
こんな問いを念頭に置いた上で、本文を読み進めます。
すると、以下の文が続きます。
「アメリカの社会学者ディーン・マキャーネルが『ザ・ツーリスト』で指摘したように、観光者は『演出』に飽き足らずその『舞台裏』を見たがるのだから」
ここまでで把握できた内容は以下の通りです。
観光という荒波から自らの生活文化を守るために、
観光者が期待するイメージに適合的な役割を再演する観光地住民の「戦略」が
常に綱渡りとなるのは、
観光者が「演出」に飽き足らずその「舞台裏」を見たがるからである。
では、なぜ観光者が観光地の「舞台裏」を見たがるのが「常に綱渡り」となるのか?
先ほどの文は以下のように続きます。
「ありのままを見せる生活観光は、出口の見えない隘路でもあるだろう。そこでは観光のまなざしが全域化していく」
観光者が「演出」に飽き足らずその「舞台裏」を見たがるということは、演出が行われていない場所、すなわち「ありのまま」の「生活」を見せることになります。
そしてそれは「全域化していく」ことになるのです。
では、A=Bの図式に肉付けします。
A観光地住民の「戦略」
・観光者が期待するイメージに適合的な役割を再演すること
・観光という荒波から自らの生活文化を守るためのもの
=
B常に綱渡り
・観光者は「演出」に飽き足らず「舞台裏」(=「演出」していない、ありのままの生活)を見たがる
・それは全域化していくことになる(観光者に自分たちの生活をどこまでも見せなければならなくなる危険性がある)
これで終わりです。
最後に、この設問の選択肢を載せておきますね。
是非解いてみてください。
選択肢問題を解く場合も、今回のようにまず傍線部で不足情報・得られる情報・A=Bの成り立つ理由などを意識した上で、本文に根拠を取るようにしてください。
その上で、選択肢を選ぶと正答率は上がりますよ。
頑張りましょう!
①観光者の持つイメージを受け入れることで自らの文化を維持しようとする観光地住民の「戦略」は、観光者のまなざしが観光者の所属する社会の制度に規定されているために、他者の文化の需要を強いられかねないということ。
②何をどこまで見たり見なかったりするかという観光者の選別に対応していく観光地住民の「戦略」は、観光者の恣意によって観光の対象が変わるために、そのまなざしにもてあそばれる事態を招きかねないということ。
③ありのままの現実を見たがる観光者に寄り添おうとする観光地住民の「戦略」は、おぞましい部分を好んで観光の対象とする観光者のまなざしのために、観光地住民が自らの手でその生活をゆがめてしまいかねないということ。
④自らの生活文化を守るために観光者の期待に応えて演技をする観光地住民の「戦略」は、演出の裏側をも見ようとする観光者の欲望のために、観光者が期待するものを際限なく生活のなかで見せていくことになりかねないということ。
お申込・お問い合わせは042-574-1301で承ります。
上のバナーからもお申し込みいただけます。