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ena高校部 国立

現代文得点力アップのための「設問読解力養成講座」第2回

コメント数:0   投稿日:2025/05/08 17:51:07 

本日は、2025年度京都大学(文系)第1問の問1を行います。

と、その前に。

なぜ、「設問読解力養成講座」を始めようと思ったかを書きます。

今年の高3生のがんばりが見事で、読解レベルが高くなっているいことが一番の理由です。

SS(最高水準)クラスの生徒はもちろん、レギュラークラスの生徒もたいへんできるようになっています。

それなのに、思うように点にならずに苦しんでいる生徒たちがいます。

読解力が磨かれたために情報量が増え、その整理が仕切れない状態になっている、そんな感じです。

この解決方法は一つ、設問からのアプローチを正しく行う練習をすることです。

でも、それだけの練習を行う時間を授業で取るのは難しい。

参考書や問題集を解いたところで、私の指導しているとおりの解説は書かれていない。

となれば、答えは一つ。

私が設問読解の解説を書くしかない。

これを書くのは実は結構骨が折れるのです。

でも、生徒達が「設問読解講座」を週に何回か読むことを続けるだけで、

大きな成果につながることは間違いありません。

そのことを考えると、そんな苦労も楽しみにしかなりません????

 

では、本日の講座に入ります。

問1 傍線部について、都市が「かわいらしいもの」であるとはどういうことか、説明せよ。

傍線部 「そのように『かわいらしいもの』であろうか」

 

傍線部についての読みを深めます。

考えることは前回の講座で確信した二点です。

1)不足情報 

「いつ?」「どこで?」「誰が・何が?」「何を?」と問いかけて、

不足している情報を把握する。

2)得られる情報

その表現からわかることを考える。通称「ウラを読む」です。

 

では具体的に把握します。

1)不足情報

①「そのように」の指示内容をつかむ。

②「かわいらしいもの」の主語をつかむ。

(「何が?」「かわいらしいもの」なのかを考える、でもOKです)

設問にあるとおり「かわいらしいもの」の主語は「都市が」なのですが、

本文で確かめることが大切です。これは後ほど深掘りします。

2)得られる情報

都市は「「かわいらしいもの」であろうか」の「か」に注目。

「か」の働きは、「疑問」か「反語」。

それぞれの場合について考えます。

①「疑問」の場合

・「疑問」は「答え」とセットの言葉。

都市は「かわいらしいもの」なのだろうか、という問いの答えは基本的に二つ。

1.かわいらしいものだ

2.かわいらしいものではない

・「疑問」から「答え」の流れには「理由」が必要。そのことを意識して読んでいきます。

②反語の場合

・筆者は、「都市=かわいらしいものではない」と考えていることがわかります。

A=Bという筆者の判断があるときは、必ず理由が必要です。

「A=Bの成り立つ理由」を考えるパターンは基本中の基本になります。後ほど詳しく説明します。

 

それでは、ここから1)の②を深掘りします。

②「かわいらしいもの」の主語をつかむ。

そのために、本文を確認します。

傍線を含む一文は以下のとおりです。

「しかし、都市は、いまもなお、そのように『かわいらしいもの』であろうか」

この一文を「不足情報」「得られる情報」で考えます。

「しかし」(得られる情報)

この前の文の内容が予測できます。

都市はかつて「かわいらしいもの」だったという内容。

「都市は、いまもなお」(得られる情報)

都市はかつては「かわいらしいもの」であった。

そのように「かわいらしいもの」であろうか。

今となっては、都市は「かわいらしいもの」とは言えない。

以上を簡単に整理すると、以下のとおりになります。

 

かつての都市=かわいらしいもの

↕︎

現代の都市=かわいらしいものではない

この図式まで来ることは、それほど難しいことではありません。

この次の段階に進めるかどうかで点数が大きく変わるのです。

 

ここで、3つの問いを作ってください。

先ほど「反語」のところに書いた「A=Bの成り立つ理由」を考えます。

①なぜ、かつての都市は「かわいらしいもの」と言えるのか。

②なぜ、現在の都市は「かわいらしいもの」ではないと言えるのか。

そして、もう一つ。変化の理由を考えます。

③なぜ、かつて「かわいらしいもの」であった都市が、現在では「かわいらしいもの」ではなくなったのか。

 

さて、2)の②で予告していた「A=Bの成り立つ理由」の考え方を説明します。

例題 次の文を読んで、あとの問いに答えよ

彼はもやしと呼ばれている。

問い なぜ、彼はもやしと言えるのか。

 

この問いは、彼=もやし、が成り立つ理由を問われています。

これが「A=Bの成り立つ理由」を考える問いです。

イコールが成り立つ理由を問われているのですから、

AとBとに共通点があることがわかります。

彼と「もやし」の共通点は?

この本文では、彼の情報は「もやし」しかないので、想像しやすい「もやし」を考えます。

「もやし」はどんなものか

①ひょろっとしているもの→体力がなくひ弱な人

②日光に当てないようにして発芽させたもの→過保護に育てられた苦労知らずのひ弱な人

答え

①の場合 体力がなくひ弱な点でもやしと重なるから。

②の場合 過保護に育てられたひ弱な存在である点で、日光を当てないようにして育てられひょろっとしたしまったもやしと重なるから。

 

ここで覚えること。

「A=B の成り立つ理由」を問われた場合は、共通点を考える。

その際、情報を把握しやすい方(もやし)から絞り込み、情報を把握しにくい方(彼)をそれに重ねて考える。

これで「A=Bの成り立つ理由」の考え方の説明は終わりです。

 

では、深掘りの続きです。

設問で問われているのは、「都市が「かわいらしいもの」であることの説明です。

深掘りでわかったのは、下の図式。

かつての都市=かわいらしいもの

↕︎

現代の都市=かわいらしいものではない

ここから導き出された3つの問い。

①なぜ、かつての都市は「かわいらしいもの」と言えるのか。

②なぜ、現在の都市は「かわいらしいもの」ではないと言えるのか。

③なぜ、かつて「かわいらしいもの」であった都市が、現在では「かわいらしいもの」ではなくなったのか。

この①と②を考えると、正解を出すことができます。

A=Bの成り立つ理由なので、️の考え方を使います。

 

かつての都市=「かわいらしいもの」

このイコールが成り立つ理由を考えます。

この段階で情報が絞り込みやすいのは、「かわいらしいもの」という言葉の方です。

辞書の意味を考えてみてください。反対のもの、似たものと比べると、その言葉の意味を絞り込みやすいですよ。

では、辞書を引きます。

大辞泉

・子供らしい無邪気さや見た目の好ましさで、人を微笑ませるようなさま。

・小さくて、愛らしい。

明鏡

・姿・形やしぐさなどがほほえましく、心を引きつけられるさま。

また、小さくて愛らしいさま。

この「かわいらしい」のイメージを持って、かつての都市の情報を調べます。

 

以下のような表現が前の段落に書かれています。

われわれは、都市を政治的自由と結びつけて考える伝統をもっていない。それにしても、「町は自由でいい」と田舎の人たちには考えつづけられていた。長い間、われわれの概念にある「都市」は、文明の利器に囲まれた文化的な生活であり、洗練した趣味であり、そうして地縁的な、また血縁的なさまざまのクビキからおのれを解放し、一人の人間として生きるチャンスを求めうる場であった。都市は、そのようなものとして、強大な吸引力を発揮しつづけてきた。「あそこへゆけば、ないものはない」、「あそこへ行けばチャンスが待っている」、「美しい恋人にめぐりあえるかも知れない」等々。

 

簡単にまとめます。

かつての都市:

・文明の利器に囲まれた文化的な生活の場

・洗練した趣味

・地縁的、血縁的な束縛から解放し、一人の人間として生きるチャンスを得られる場

「あそこへゆけば、ないものはない」

「あそこへ行けばチャンスが待っている」

「美しい恋人にめぐりあえるかも知れない」

強大な吸引力を発揮し続けた

その一方での、現代の都市の内容も触れておきます。

現代の都市:

・「人間の壁」に疎外感を感じる

・自分のよりどころを失ったような安定感のない状態に陥るところ

これらの情報から、都市が「かわいらしいもの」であるという内容を答えます。

先ほどの「もやし」と同様で、「もやし」という言葉の意味合いを考慮しなければならないのです。

すなわち、「かわいらしい」に当たる内容が記入される必要があるのです。

本文に書かれている内容をただまとめた答えでは不十分なのです。

今回の設問の思考プロセスをまとめます。

①問いかけ(不足情報)

何が、「かわいらしいもの」なの?

→かつての都市

②ウラを考える(得られる情報)

かつての都市=「かわいらしいもの」

↕︎

現代の都市=「かわいらしいもの」ではない

③問いかけ(A=Bの成り立つ理由)

なぜ、かつての都市が「かわいらしいもの」と言えるのか?

なぜ、現代の都市は「かわいらしいもの」と言えないのか?

→かつての都市=憧れの場所

現代の都市=厳しい現実を思い知らされる場所

→「かわいらしいもの」という表現に重なるような言葉を考える。

 

普通の生徒は、ただ本文に書いてある内容をまとめて終わりです。

それを、上記のような思考プロセスで正解の一歩手前まではいくことができるのです。

本講座の一番の狙いは、常に同じ思考を行えるようにすること。

 

今回使った考えは三つです。

①不足情報

②得られる情報

③A=Bの成り立つ理由

そして、この三つが基本なのです。

あとは、練習あるのみ。

ともにがんばりましょう!

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