都立高一般入試問題分析
都立高一般入試問題分析
東京都立戸山高等学校
都立高一般入試問題分析
国語
1 漢字(読み) 2 漢字(書き) 3 小説文 4 論説文 5 現古融合文
例年通り大問5題で、難度も昨年度と同程度である。1・2の読み・書きともに、今年度も四字熟語が出題されている。3の小説文の出典は、大正・昭和期の作家である宮本百合子の『雨と子供』で、記号問題5問、記述問題1問の出題と例年通りである。文章量は昨年度と同程度であるが、記述問題の字数は昨年度に比べ減少した。記号問題は登場人物の様子・心情について答える問題と、表現方法の特徴を問う問題であった。いずれも典型的な出題であり、過去問を用いた対策を十分にしておきたい。4の論説文の出典は、濱良祐『曲がり角の向こう』で、インターネットの発達に伴う社会の変化を批判的に論じた文章である。入試の論説文として典型的な題材であり、内容や主旨の理解は難しくない。傍線部に関する適切な説明を選ぶ問題が中心で、小問数も例年通りであった。作文問題はインターネット社会の状況について、その弊害と解決のための行動が問われた。5の出典は、渡辺秀夫『かぐや姫と浦島』。文章中に和歌・古文が引用され、訳文が添えられる融合文であった。例年通りの形式であり、読解の難度は高くない。昨年度は和歌の技法が問われたが、今年度は熟語の意味を問う語彙の問題が出題されている。全体を通じて、書かれていることを正確に読む力が問われる出題である。典型的な問題の解法、近代文学からの出題に対応できる語彙力を身につけるため、ほかの都立自校作成問題校の過去問にも積極的に取り組んでおきたい。
数学
1 小問集合 2 関数 3 平面図形 4 立体図形
例年と同じく大問4題、小問14問の問題構成。作図問題が1問、証明問題が1問、途中の過程を書かせる問題が2問出題されており、出題内容に変化はない。1は小問形式の問題で、平方根の計算、二次方程式、連立方程式、確率、作図と出題内容はほとんど変わらなかった。作図は角度の大きさから角の二等分線に気づくことができたかがポイントであった。2は二次関数の問題で、〔問1〕は双曲線の比例定数を求める問題、〔問2〕(1)は座標を求める問題、(2)は三角形の面積比を求める問題。放物線を題材にした典型的な問題である。3は平面図形の問題で、三角形と円を組み合わせた問題。〔問1〕は辺の長さの比から三角形の面積を求める問題。〔問2〕(1)は合同の証明問題。平行線の性質と円周角の定理を用いて説明できたかがポイントであった。(2)は線分の長さを求める問題だが、相似な図形を利用することができるかで差がつく出題。4は立体図形から、円柱の表面上を点が動く問題。〔問1〕は相似な三角形から線分の長さを求める問題。〔問2〕は三角形の面積の最大値を求める問題。〔問3〕は円柱の側面上を通る線分の最小値を求める問題だが、整数問題でもあるので差がつく問題。対策としては、普段から解けなかった問題の解きなおしをすることが有効である。他の都立自校作成問題校の過去問もすべて取り組み、様々な解法を身につけていこう。
英語
1 リスニング 2 対話文読解 3 長文読解
大問構成は例年同様、2が対話文、3が説明文形式の長文読解だった。今年度は2・3が合計約2250語となり、昨年度の約2165語と比べ、語数自体は少し多くなった。2は折り紙についての対話文で、会話文補充、空所補充、整序英作、要約文など例年よく出題されるタイプの問題だった。〔問2〕の空所補充は形容詞形と副詞形の違い、主語が人かそれ以外によっての使い分けなど、基本文法について高い応用力や活用力が求められた。〔問4〕の整序英作は原形の動詞beとcreateから目的語・補語を考えれば比較的容易に解けたのではないかと思われる。3は“the James Webb Space Telescope”〔ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡〕を中心とした天体についての説明文。〔問1〕は空所前後の語や句、節との関係をよく見れば問題なく解けるが、ある程度時間がかかることが予想される。〔問3〕は空所後のand become~、その後の文を参考にしつつ、かたまりを作って組み合わせる必要があり、素早く解くのには難度が高い問題だと言える。〔問6〕の英作文は受験生によって書きやすさが分かれるため、英作文に手を付けるか他の問題に時間をかけるか、素早い判断が求められたと考えられる。形式こそ都立自校作成問題校でよく出るものだが、様々なテーマの長文読解に慣れている必要がある。本校の過去問はもちろんのこと、その他の都立自校作成問題校の問題、難関私立校の問題にも数多く触れておくべきである。
理科
1 小問集合 2 小問集合(レポート形式) 3 地学分野 4 生物分野 5 化学分野 6 物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。1は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。2は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。3では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。4は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。5は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。6は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。
社会
1 小問集合 2 世界地理 3 日本地理 4 歴史 5 公民 6 総合問題
1は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。2の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。3の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。4の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。5の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。6の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。
国語
難度は例年通り。出題構成や問題数、課題文の字数についても大きな変化はなく例年通りだった。
漢字の読み書きは構成・難度ともに例年通りだが、「夏炉冬扇(かろとうせん)」「コウウンリュウスイ(行雲流水)」の四字熟語の読み書きがやや難。
文学的文章は本校には珍しく存命の作家からの出題。小問数は例年通り6問だが、記述の文字量が35字以内から70字以内に増加。本文中に直接的な心情表現がないので難度は高いと言えよう。論説文では、寺田寅彦の文章からの出題。問題数、難度ともに例年通りだが、作文問題については昨年度よりも書きやすい内容であった。現古融合文はすべて選択式の問題であった。
数学
大問1の作図の問題以外はかなり解きやすかった。大問2の関数は、問1は解きやすいものの、それ以外の2問は解法自体は難しくないが、計算力が要求された。大問3はひし形の内接円に関する問題。都立では珍しい出題。問2の難度は高い。大問4は立体図形。切断面を的確に描く力が要求された。合否を決める問題といえる。問2までを正答できるかがポイントであった。大問2、3では一部難問が含まれているが、全体的には実力差を図る良問が多く、難問以外を確実に得点できるかが重要であった。
英語
文章量は全体的には減っており、大問2は昨年度が3ページ半だったのに対し今年度は2ページ半、大問3は両年ともに2ページ弱であった。問題形式はほとんど変わらなかった。会話文補充、下線部の書き換え、適文選択、語順整序、内容一致、本文全体の内容をふまえた空所補充が出題された。大問2の問7や整序英作、条件英作が解きやすい問題であったことに加えて、例年、戸山高校でのみ出題されていた形式の問題が今年度は出題されていなかったことを加味すると、難度は例年に比べやや易化したと予想される。
社会
出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。
理科
問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。