都立高一般入試問題分析

東京都立国立高等学校

都立高一般入試問題分析

国語

漢字(読み) 漢字(書き) 小説文  論説文  現古融合文
全体の構成は例年と比べてやや少なく、大問5題、小問数は漢字の読み・書き10問を含めて28問。の漢字の難度は例年並み。聞いたことがあっても、いざ漢字に直すと戸惑ってしまう言葉が狙われている。言葉の意味を考えて、冷静に漢字に直せば正解できる。また、四字熟語の幅広い学習は必須である。の出典は川端裕人『てのひらの中の宇宙』(約3000字)で、湧水池で生き物を捕まえて交流する親子の姿が描かれている。会話が多用されており、親しみやすい問題。選択問題が7問、抜き出し問題が1問。選択問題は平易で、傍線部までの流れをつかめば正解できる。抜き出し問題は探す範囲が問題文全体となる上、条件が漠然としていて難しい。昨年度同様、記述問題の出題はない。の出典は河野哲也『人は語り続けるとき、考えていない』(約4000字)で、他の対話との違いを示しながら、哲学対話とは何か、その目標は何か、を解き明かしていく。哲学の文章の常として、同じような内容が繰り返される。抜き出し問題は、該当箇所が地の文にカムフラージュされて探しづらかった。選択問題5問はやや難。作文のテーマは平易で書きやすいものだった。の出典は久保田淳『藤原俊成』(約2500字)で、平安時代末期の歌人・藤原俊成の歌論について論じている。やや読みづらい文章である。選択問題が5問で、傍線部前後が正しく読めれば正解できる。
全体的に難化傾向にあり、問題数も多い。近年の都立自校作成問題校の過去問を中心にスピードを意識した演習の繰り返しが重要である。選択問題では選択肢の選択基準を明確にすること、記述問題では題意の把握と、分かりやすい構成を心掛けること。これらをそれぞれ意識して練習を重ねることが不可欠となる。

数学

小問集合  二次関数  平面図形  空間図形
大問4題、小問14題の問題構成。は平方根、連立方程式、資料の整理、確率、作図の5問。難問はほとんどないので、少なくとも4問は正解したい。は昨年度同様、二次関数からの出題で、〔問1〕はaの値、〔問2〕は直線の式、〔問3〕は座標を求める問題。いずれも典型的な問題で、前期日曜特訓から何度も練習した分野でもあるので、満点を狙いたい。日頃から早く正確に解くことを意識するとよい。は平面図形で、正方形と円を組み合わせた問題。〔問1〕は弧の長さの比から角度を求める問題。〔問2〕は合同の証明。正方形や円の性質を理解していれば、解きやすい問題だった。〔問3〕は面積を求める問題。すべての問題が受験生にとって見たことがある問題なので、落ち着いて解けば完答できる問題であった。は例年同様、立方体の問題。図形の中を動く点を考え、〔問1〕は長さ、〔問2〕は面積、〔問3〕は体積を求める問題である。問題を正しく読み取り、〔問1〕だけでも正解したい。日頃から立体図形から平面図形を取り出す訓練をしておくとよい。
本校に合格するためには、前期から日曜特訓に参加し、できなかった問題を徹底的に復習する必要がある。また、他の都立自校作成問題校の過去問だけでなく、難関国私立校の過去問にも多く取り組み、応用力を身に付ける必要がある。

英語

リスニング  対話文  長文読解
今年度も例年と同じくリスニング、対話文、長文読解の構成だった。の対話文は例年通り理系の内容で、今年度はパズルを解いてメッセージを解読するという内容となっていた。〔問1〕の内容把握と〔問2〕の整序英作(関係節による修飾)は平易といえる。パズルを解くのに夢中になって時間がかかりすぎないよう気を付けたい。また、〔問3〕・〔問6〕の語句抜き出しは探すのに時間をかけすぎないようにしたい。内容把握の設問は平易であり、昨年度の(石けん泡の分子の説明)に比べ、易化した印象を受ける。も例年通り1000語程度の物語文であり、選択問題は比較的平易であった。整序英作もかなり平易といえる。複数ある語句挿入の設問は本文内に答えが確実にあるので見つけたい。〔問8〕の英作文は解答の焦点が絞りづらく、解答作成を敬遠した受験生が多かったと思われる。

理科

小問集合  小問集合(レポート形式)  地学分野  生物分野  化学分野  物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。

社会

小問集合  世界地理  日本地理  歴史  公民  総合問題
は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。

国語

難度は昨年度よりやや難化。構成は例年通りで、字数はやや増加、作文以外の記述は論説文の1題だけと減少した。
漢字は「シンゼンビ(真善美)」、「ガンコウシハイ(眼光紙背)」と三字熟語と四字熟語がともに出題され、総じて難度は高いと言える。読解の大問3題とも、課題文は平易な文章ではなく、そもそもの語彙力がないと容易には読み取れない内容ではあったが、選択問題は特段難しいわけではないため、落ち着いて処理しておきたい。小説では授業の様子を読み取り、解答する問題が出題された。作文の出題形式は例年通り。

数学

大問4が難化したものの、それ以外は解きやすい問題であった。「大問2の関数の問2(2)で点Dが直線OB上にあることを示せ」という問題に戸惑った生徒もいたとは思うが、答えを出すこと自体は難しくない。全体としては大問4では差がつかず、大問1~3に時間をかけて確実に得点できるかがポイントであった。昨年度の最後の問題は難問が出題されていたが、今年も立方体の対角線の中点を通る切断面が正六角形であることを利用する難問が出題された。2点から等距離にある面(垂直二等分面)に関する出題であった。

英語

昨年度は大問2が環境問題に関する対話文、大問3が物語文であった。今年度は大問2が理系知識に関する対話文で、大問3が昨年度同様に物語文であった。出題形式に大きな変化はないが、難度は昨年度と比べて上がっていると思われる。長文読解では、各大問の内容真偽問題がそれぞれ正しいものを一つ選ぶという形式に戻っていたこともあり、失点を避けるべき問題が6割程度あったと思われる。しかし、なかには大問2の整序英作で正確に主語を選択できない、letの用法を押さえられていない、大問2の問6にあるto give a bubble the smallest possible sizeの解釈に時間をかけすぎてしまった、問8の印象的な絵に面食らってしまった、大問3の問7に悩まされてしまったなど、一筋縄では正答できないと思われる問題もあった。今後も理系知識への理解力と読解力を測る問題が出題される可能性が高いため、それに類する問題に多く取り組む必要がある。英作文は昨年度同様20語以上が2問出題。昨年驚かされた発音問題はなくなった。

社会

出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。

理科

問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。