都立高一般入試問題分析
都立高一般入試問題分析
東京都立国分寺高等学校
都立高一般入試問題分析
国語
1 漢字(読み・書き) 2 小説文 3 論説文 4 現古融合文
全体の構成はほとんど例年と変わらず、大問4題の出題。昨年度は読解問題が全て記号であったが、2に書き抜きの問題が復活した。1の漢字の読み書きの難度も、昨年度と同じである。都立自校作成問題校レベルの漢字を問題集などで練習し、慣用句の漢字にも触れておきたい。2は原田マハ『リーチ先生』からの出題。例年通り人物の心情や様子、文章の表現を問う問題が小問6問で出題された。〔問3〕で先生と生徒の対話形式の抜き出し問題が出題されたが、結局は人物の心情や様子についての問題であるため、傍線前後の様子やセリフをヒントにして、選択肢を吟味し正答する訓練を積んでおきたい。3の出典は好井裕明『「今、ここ」から考える社会学』で、シュッツやガーフィンケルの理論から日常や常識について述べている文章であった。傍線部の具体化や文章の展開に関する選択問題が5問、200字作文1問が出題された。それぞれの人物の理論に対して筆者がどこに共感しているかを正確に読み取る必要がある。日頃から要旨だけでなく論理展開も意識して文章読解に取り組みたい。4の出典は鈴木日出男『万葉集入門』で、『万葉集』で自然が多く読まれた理由と和歌の表現について述べた文章であった。それぞれの和歌の表現に対する筆者の解説を正確に読み取りたい。対策としては、八王子東や新宿などの都立自校作成問題校の過去問を中心に、問題で何が問われているのか、どれが正しい選択肢なのか、根拠をもって選べるようになるまで読解問題に取り組んでいくことが重要である。
数学
1 小問集合 2 二次関数 3 平面図形 4 空間図形
大問4題、小問15問の問題構成。昨年度より小問の数は減少したものの、問題量はあまり変わらない。1は平方根の計算、二次方程式、一次関数、作図、箱ひげ図。〔問1〕~〔問5〕は標準的なレベルの問題のため確実に得点したい。〔問6〕の箱ひげ図は、初めての出題だった。2は二次関数の典型的な問題。〔問1〕の格子点の問題は、原点や軸上の点も含んで数えるのかどうかの条件を読み飛ばしていないかどうかが重要。〔問3〕は公式を覚えていれば容易に解ける問題のため、確実に正解したい。3は平面図形からの出題で、三角形に関する問題。〔問1〕は共有角を持つ三角形の面積比の公式を用いれば容易に解答を導き出せる。〔問2〕は証明の問題。問題文が少し長めだが、条件をしっかりと読み取れれば解答は導き出せる。4は空間図形の問題。生徒と先生の会話文を追わせる形式の問題は昨年度と同様の傾向であるが、昨年度よりも会話文が長くなり、文章中の空欄部分に穴埋めをする箇所が増加した。各単元の典型的な解法をただ覚えるだけでなく、なぜその解法が使えるのかを理解し、 類題を解くことで定着を図る必要がある。〔問3〕 は難問といえる。本校に合格するには、PERSPECTIVE 内の例題の解法を理解し、類題を解くとともに、秋以降にはenaの都立高金本を利用して都立自校作成問題校の過去問を解き、私立MARCH附属の過去問にも取り組むことが必要である。
英語
1 リスニング 2 対話文 3 長文読解 4 対話文
今年度も大問4題、小問数もリスニングを除き19問の構成であった。その中で記述問題は3問となった。2は、英語教師に生徒が将来の進路について相談するという内容。内容把握、文脈をおさえた適文選択、適語補充、整序英作、時系列の把握が必要な選択問題、内容一致問題が出題された。3は、日本の野鳥についてのプレゼンテーションが題材であった。脱文挿入、文脈をおさえた整序英作、グラフを絡めた選択問題、内容一致問題などが出題された。4は、日本文化の独特な特徴についての対話文であった。文脈をおさえた適語補充、脱文挿入、整序英作、適語句選択、対話文完成問題、内容一致問題、テーマ英作文が出題された。英作文は例年同様、20語以上40語以内という語数指定があり、アメリカに留学してホームステイをするとしたら、ホストファミリーにお土産として何を渡したいかを二つ以上の理由を含めて書くというものであった。長文が3題あるため、それぞれを 13分程度で解く必要がある。速読力を上げるためにも、語彙力の向上や早い時期から長文読解に慣れていかなければならない。また、文脈をおさえた整序英作の対策として、品詞の理解や文法事項の定着を中3の夏までに図っておきたい。精読、速読に慣れるために本校だけではなく他の都立自校作成問題校の過去問にも取り組んでいく必要がある。
理科
1 小問集合 2 小問集合(レポート形式) 3 地学分野 4 生物分野 5 化学分野 6 物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。1は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。2は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。3では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。4は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。5は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。6は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。
社会
1 小問集合 2 世界地理 3 日本地理 4 歴史 5 公民 6 総合問題
1は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。2の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。3の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。4の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。5の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。6の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。
国語
全体的に例年通りの難度。
小説では、文章全体を見通した表現・人物像等に関する問題はなかった。
論説文では、段落構成に関する問題が出題された。
また、漢字・作文以外はすべて記号選択の問題であった。
いずれも典型的な出題パターンなので、傍線部から丁寧に本文を追えば解ける内容であった。
数学
全体的に例年通りの難度だが、大問4の空間図形の出題傾向が例年と異なり、会話文から状況を把握して文章の意味を理解しながら解き進める必要があった。切断面を正確に描く力が要求された。全体として頻出パターンの問題が多く、努力してきた成果が発揮できる良問ぞろいの出題であった。ミスなく確実に得点できたかがポイントであった。
英語
昨年度の問題と比べて全体的に文章量が増えているが、文章自体は馴染みやすいテーマだったため、難度に大きな変化なかった。大問2では3ページ半に渡ってエコツアーや環境保護に関する対話が展開されており、いわゆる「型」にはまらないタイプの問題も出されてはいるが、内容そのものは読み取りやすくなっていたため冷静に対応できた受検生が多かったと思われる。大問3は例年通りグラフ資料読み取り型の問題であった。こちらも大問2と同様に、内容を読み取りやすいテーマであった。大問4では3人の生徒が人工知能に関する具体例を発表しており、それぞれの内容を読み取りやすいと感じた受検生も多かったと思われる。しかし、得点力を向上させるためにも、新宿高校や西高校と同様に3つの大問と、テーマ作文とはいえ、20語から40語以内の英作文を処理するスピードを身につけておかなければならない。
社会
出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。
理科
問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。