都立高一般入試問題分析

東京都立日比谷高等学校

都立高一般入試問題分析

国語

漢字(読み) 漢字(書き) 小説文  論説文  現古融合文
例年通りの大問5題構成だが、課題文が小説文約5000字、論説文約5000字、融合文約4000字と長くなり、出題形式も漢字と作文以外に記述問題が3問となった。の読みは平易であったが、の書きでは「会心」「一陽来復」など書きにくいものが出題された。の出典は河﨑秋子『温む骨』。自分の陶芸に足りないものに向き合うまでの姿を、妻とのやり取りの中で表現している。〔問1〕~〔問5〕は80字以内の記述と、内容と心情を問う選択問題だが、〔問6〕では本文の表現や内容について適切なものを6択から2つ選ぶもの(完答)が出題された。全体的にやや難といえる。の出典は大塚淳『深層学習後の科学のあり方を考える』。科学の両輪である合理性と客観性が、一見その代表に見えるAIの深層学習の導入によって再考を促されるという内容である。〔問1〕~〔問5〕は選択問題と3字の抜き出しでの文章内容の説明である。〔問6〕の作文はAI活用の可能性に関するもので「具体的な領域を挙げる」という条件が付いた。この大問は比較的平易であった。の出典は中西進『万葉のことばと四季』。5問ある小問は、副詞「およそ」の識別以外は内容理解を問うものであった。短時間で正確に読み取る力が試されたと言える。

数学

小問集合  関数  平面図形  立体図形
今年度の出題も昨年度と同様、大問4題、小問14問の構成で記述が3問であった。は今年度も独立小問5問で、〔問1〕は平方根の計算、〔問2〕は二次方程式の計算、〔問3〕は確率、〔問4〕は中2での学習範囲である四分位数が出題された。〔問5〕は図形の折り曲げから60度を作図する問題である。この5問は確実に正答したい。は2つの放物線からの出題であった。〔問1〕は文字を用いて三角形の面積を表す問題、〔問2〕は本校ではよく出題される2つの放物線と直線の問題、〔問3〕は平行四辺形になるときのtの値を求める問題である。3問とも問題文の条件を正しく理解してから立式・計算をし、確実に正答したい。の平面図形も昨年度同様、円が出題された。〔問1〕は△CFEの内角と外角の利用、〔問2〕(1)も昨年度同様に三角形の合同の証明問題。一見簡単そうに見えるが、正確に記述するにはかなりの実力が必要である。(2)は一つの角の大きさが 120度である三角形の面積を求める問題。(1)の三角形の合同の利用で求めることができる。補助線を的確に引けたかがポイントであった。は正方形の紙に光を当てて影の形を考える問題。最近の都立高校の入試問題では見かけない問題で、解答形式も記号選択の小問もあり、時間をかけすぎて間に合わなかった受験生もいると思われる。全般的には昨年度と難度はほぼ同じであるが、記述問題に時間をかけすぎると最後の問題までたどりつかない場合があるので、日頃から問題を解くときには時間配分も意識したい。また、得点力アップのため、難関私立校の入試問題の演習も増やすことが必要である。

英語

リスニング  対話文  長文読解  英作文
7年間変わらない問題構成。は整序英作文、内容に関する選択問題に加え、昨年度同様、30語以上の英文を自分で考えて記述する問題が出題された。は昨年度に続き、説明文の読解が出題された。昨年度出題された図表を用いた問題は、今年度は出題されなかった。内容理解に関する選択問題が6問と、「15語以上の英文」を補充する問題が1問出題された。は「交換留学生の体験入学時に行う催し事で最もふさわしいものについて決定する際の議論の仕方」について、複数の資料をもとにより良いと考える方法を英語で書かせる問題だった。
例年と同様、「聴く力」「読む力」だけでなく「英語で表現する力」が求められ、語彙力、速読力、表現力が総合的に試される出題であった。本校の問題を迅速に処理するためには、注釈に頼らず内容を理解する必要がある。そのための語彙力の訓練はもちろん、1000語以上の説明文の長文問題を20分以内で読み解く練習及び易しい表現で英文を書く練習を数多く積むことが欠かせない。日常からまとまった英文を読む習慣をつけておくことが肝要である。また、これと並行して、英作文を短時間で正確に書けるよう早いうちから訓練をしていくことが必要になる。

理科

小問集合  小問集合(レポート形式)  地学分野  生物分野  化学分野  物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。

社会

小問集合  世界地理  日本地理  歴史  公民  総合問題
は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。

国語

難度は昨年度と同程度。出題構成や字数は例年通りで、作文以外の記述が小説の1題だけ、という昨年度の形式が踏襲された。
漢字は「素封家(そほうか)」、「カンケン(管見)」など、受検生の語彙にはない漢字の出題も例年通りで、総じて難度は高い。読解の大問3題とも課題文は平易な文章ではなく、そもそもの語彙力がないと容易には読み取れない内容ではあったが、選択問題は特段難しいわけではないため、落ち着いて処理しておきたい。小説では八十字の心情記述問題が出題されたが、日頃の練習の成果が問われた問題であった。作文の出題形式は例年通り。

数学

昨年度より得点しづらい問題構成であった。平均点は下がると予想される。大問1は昨年度並み。大問2は二次関数で二つの放物線に関する問題。難度は決して高くはないものの完答するにはかなりの実力が必要。大問3は円に関する問題。証明は日比谷高校特有の合同の証明。実力がないと完答は厳しい。大問4は空間図形。問2、3では自分で図を描いて考えなければならなかったため、差がつく問題といえる。実は問3が問2より解きやすかった。

英語

長文2題の文章量は昨年度、一昨年度より若干多くなっていた。要旨をつかみやすい内容であったとはいえ、内容理解の鍵となる言葉や文の内容を正しく理解しておかなければ正答するのが難しい問題が散見された。設問形式は、昨年度のものと比べると少し変わったかのように思えるが、この5年の出題形式の範囲内で出題されている。大問2の長文のテーマが西高校と重なっていた。タイムリーな話題も含めてさまざまな知識をつけておくことも得点力の向上につながる。日比谷高校の受検生を悩ませる必出の15語以上、30語以上、50語以上の英作文は今年度も出題された。記号で解答する問題に大きな得点差を生むような問題が少ないぶん、この大問2、大問3の英作文の出来が大事になる。

社会

出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。

理科

問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。