都立高一般入試問題分析
都立高一般入試問題分析
東京都立青山高等学校
都立高一般入試問題分析
国語
1 漢字(読み) 2 漢字(書き) 3 小説文 4 論説文 5 現古融合文
大問は例年通り5題で小問は26問、問題数は昨年度と変わらなかった。1・2漢字の読み書きは各5問。漢字の難度は、読みも書きも例年通りであった。3小説文は、竹内真『図書室のピーナッツ』からの出題であった。司書の資格を取るために勉強を始めた主人公の姿が描かれている。昨年度あった自由記述形式の記述問題がなくなり、すべて記号選択の問題となった。4論説文は、上村博『身体と芸術』と小林太市郎『藝術の理解のために』からの出題であった。芸術作品の創作とその鑑賞について述べられている。昨年度同様、文章1と文章2にまたがる横断型の問題が特徴。昨年度増加した文章量がやや減ったが、文章自体の難度は低くない。書き抜き問題の指定字数は昨年度と同様に短く、2字+6字であった。さらに使用語句を指定された記述の問題が15字以内と短い指定字数ながら1題出題された。5現古融合文は、野内良三『無常と偶然』からの出題であった。吉田兼好の美に対する意識がテーマである。記述問題は昨年度同様2問で、そのどちらも書き抜き問題であった。
全体を通して、昨年度同様書き抜き問題が多い傾向が続いている。都立の問題だけでなく、書き抜き問題が多く採用されている難関私立校の過去問を広く使用し、書き抜き問題に対するアプローチの方法と時間の使い方をなるべく早い段階で身に付けておくべきである。
数学
1 小問集合 2 二次関数 3 平面図形 4 立体図形
大問4題、小問20題の構成。1は、四則演算、一次方程式、さいころを用いた確率、表を用いた平均値の計算、2直線に接する円の作図の合計5問。難度は作図以外の4問は例年よりやや平易で、作図問題は例年並みであった。作図以外の問題は情報処理スピードも問われており、時間をかけず全問正解しておきたい。2は二次関数の問題。〔問2〕は昨年度と同様に空欄補充形式で、誘導に沿って計算することが求められているが、解き方、問題ともに標準レベルであるため確実に正解しておきたい問題である。〔問3〕は平方根の計算が若干煩雑ではあるが、問題自体は典型的で、普段通りの方法で落ち着いて解くことができれば問題ない。3は平面図形の問題。〔問1〕・〔問2〕は平易であり、時間をかけずに正解したい。〔問3〕は補助線の利用など発想力が求められる問題である。普段から多くの図形問題に接しているかどうかで差がついた問題であるといえよう。4は立体図形の問題。〔問2〕は問題を解く方法を自分で選んでから記述式で解く問題である。問題を解く前に方針をある程度立て、難度の低い解法を選べるかがポイントであった。〔問3〕は頻出の問題ながら、正確性が求められる問題であり、差がつく問題であったといえる。
全体としては例年並みの難度であったものの、高度な計算力が要求される問題で差がつき、ミスの許されない入試となった。日頃から応用問題を含んだ問題演習を積み、問題を見たら即座に解法が思い浮かぶレベルまで持っていくことが重要である。
英語
1 リスニング 2 対話文読解 3 長文読解
出題構成は前年度同様、リスニングと長文2題(対話文読解と説明文読解)。文字数は、2が約1170字で3が約1100字とほぼ変化なし。設問数は、2が昨年度8問構成だったものが今年度は7問構成。図表を見て答える問題や内容一致問題、本文の内容を踏まえた要約(文中の単語を用いて作る)など過去問を複数年度しっかりやってあれば対応しやすいものであった。一方、3は7問構成が9問構成に変更されている。英作文は昨年度同様3の最終問題として出題された。問4のような適語句選択の完全解答問題が、例年とは違うパターンであった。
長い文章を短い時間で速く読み、summary(要旨)をとらえた上で本文中のどこに何が書いてあったかを覚えておくことが高得点を取るカギとなる。文章の長さも難度も進学指導重点校の中では標準であり、英作文を書かないで(時間がないから飛ばして)合格者平均点をとることは至難だと思われる。注に頼らずに文章を読むために英検2級程度の語彙力と文法力を身に付けること、これを目標に前期のうちから最低1日30分以上の勉強量を確保してほしい。
理科
1 小問集合 2 小問集合(レポート形式) 3 地学分野 4 生物分野 5 化学分野 6 物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。1は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。2は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。3では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。4は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。5は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。6は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。
社会
1 小問集合 2 世界地理 3 日本地理 4 歴史 5 公民 6 総合問題
1は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。2の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。3の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。4の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。5の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。6の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。
国語
出題形式や問題数、課題文の文字数等で大きな変化はなく例年通りだが、文学的文章の問題があまりにも平易だった昨年度よりは難化したと言える。
漢字の読み書きは例年通りの難度で、日頃の練習の成果が出る問題であった。
文学的文章は、冒頭でも述べたように昨年度よりはやや難化したが、それでも解きやすいものである。論説文では、同一のテーマを扱った二つの文章からの出題。文章2の主旨にあてはまる内容を文章1から探す文章横断型の問題が出題された。作文問題の出題形式は例年通りで点差がつく問題となっている。
数学
全体的に例年より解きやすくなった。特に平面図形と立体図形は昨年度よりも易しくなり、ここで得点できるかが重要であった。空間図形の回転体、球に関する問題も出題されたが、穴埋め形式の問題も導入されたため、全体としては解きやすい問題が多かった。高得点が必要なミスが許されない入試問題であったといえる。
英語
今年度も、問題の難度や文章量ともに例年とほぼ同じであった。また、どの設問も内容に深く関係しており、短時間での内容把握が求められる傾向であった。英作文は「エネルギー不足によって起こる問題」の解決法。本文に紹介されているものは除くため、しっかり内容把握が出来ているかどうかが問われた。日頃から興味関心を幅広い分野に向けておくことが必要と言える。
社会
出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。
理科
問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。