適性検査分析

東京都立
立川国際中等教育学校

基本情報

立川国際中等教育学校 外観

学校紹介

2008年(平成20年)4月「国際」を冠する唯一の都立中等教育学校として開校。海外帰国生徒及び外国籍の生徒の受け入れ、留学生との交流や海外研修など体験を通じた国際理解教育を実践。

住 所

東京都立川市曙町3-29-37

電話番号

042-524-3909(経営企画室)

042-529-5335(職員室)

042-527-1829(FAX)

アクセスマップ

過去の入試データ

募集人員

年度 2020 2021 2022 2023 2024
65 65 65 65 65
65 65 65 65 65
130 130 130 130 130

応募者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
252 270 299 213 209
403 330 363 281 320
655 600 662 494 529

受検者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
239 266 283 204 205
389 316 352 271 308
628 582 635 475 513

合格者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
65 65 65 65 65
65 65 65 65 65
130 130 130 130 130

実質倍率

年度 2020 2021 2022 2023 2024
3.68 4.09 4.35 3.14 3.15
5.98 4.86 5.42 4.17 4.74
4.83 4.48 4.88 3.65 3.95

適性検査分析

適性検査Ⅰ

【出典】
戸谷洋志「SℕSの哲学 リアルとオンラインのあいだ」。(創元社刊)

【出題形式】
4000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2問、作文問題1問の例年と変わらないスタイルですが、昨年に比べて文章量は2倍近く増えました。また、ここ2年姿を消していた作文の条件が再登場しました。読解問題の字数は合計最大105字、作文の最大字数が460字となり、昨年よりは書く分量がやや減少した形です。
テーマは「インターネット上で個人の好みに合った情報が自動的に選択される仕組み」についての説明と生命の予見不可能な存在であることを対比させて「人間は予見不可能な創造的進化を遂げる」ものであることを述べています。SNSなどで同じ動画を見ても、それぞれの感じ方は個性によって異なるという筆者の考え方がとらえられれば難しい内容ではありません。

〔問題1〕指示語の内容を読み取る問題 60字以上70字以内
「このような考え方」とはどのような考え方かという指示語の内容を読み取る問題です。直前に「そのパターンのなかに『私』を位置づけることで、『私』の行動を予測することがはじめて可能になるのです」とあり、この部分を利用することになりますが、「このパターン」の内容をこの段落の直前の段落にある「人間が好きなものには一定のパターンがあり、そのパターンを学習すれば、その人間の行動は予測できる」という部分とあわせてまとめることが肝要です。傍線部の前の段落だけに目がいってしまうと必要な内容をすべて盛り込むができません。制限字数との関係で何を書くべきかを素早く決める必要がある問題でした。

〔問題2〕本文の表現の内容を問う問題 25字以上30字以内
「具体的な姿を捉える」とは世界をどのように見ることかを本文の表現をもとに言い換える問題です。傍線部では「そうした説明は~その具体的な姿を捉えることにはなりません」と書かれており、「そうした説明」では「具体的な姿を捉える」ことにはならないので、「抽象的に眺めてなされるもの」ではない内容が解答となります。この段落の直後に「具体的に眺める」とあり、この内容を説明している部分を探していきます。その内容には「あるできごとが予見不可能である」「偶然に起こる」ということが示されているので、これにあわせて解答をまとめます。字数が短いので前述のキーワードを入れて解答を作成することと、その後にある「人間」の事例が「創造的進化」という表現で述べられており、設問に関係は深いものの「人間」という限定的なものを扱っているため、この解答に盛り込むのにはふさわしくないことに気づく必要があります。

〔問題3〕作文問題 400字以上460字以内
書くべき内容は「人間はどのような存在であると述べられているか」「筆者の考えを学校生活においてどのように生かせるか」の2点です。条件と注意にしたがって書けばよいので、受検生にとっては取り組みやすいと感じられたと思います。
最初の「人間はどのような存在であるか」はベルクソンの言葉を引用した文章の後半部分に「人間はあくまでも生命であり、単なるモノではない」とあり、「生命である以上」「予見不可能な創造的進化を遂げる」とあります。また、その後の段落に「時間の経過が私たちの存在を、常に新しいもの、別なものに変えていく」とある点にも注目して、「人間は単なるモノではなく、時間の経過によって新しいもの、別なものに進化する予見不可能な創造的進化を遂げる存在」という形でまとめることができます。
一方、この考え方を学校生活の具体的な場面を挙げて考える必要があります。ここでは「時間の経過によって、新しいもの、別なものに変わること」「予見不可能な創造的進化を遂げる」などの面から、場面を想定します。「学校生活の中で毎日あいさつをする場面」によって「前の日にはいやなことがあって落ち込んでいた気持ちも翌日にはあいさつをすることで前向きになれる」など具体的な場面をいかに思いつくことができるかがポイントになります。

適性検査Ⅱ

【大問1】デジタル数字を題材にした問題
大問1は前年度同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものでした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度になっていました。

〔問題1〕マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、できるだけ早くすべての作業を終わらせます。それぞれ作業にかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。
〔問題2〕ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作」「マグネットを取る操作」「数字の書かれたボードを180度回す操作」「2枚のボードを入れかえる操作」を組み合わせて考えます。回転と入れかえをいかに効率よく使えるかがカギとなりました。

【大問2】公共交通機関の利用について考える問題
令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。

〔問題1〕公共交通機関の利用割合が偏っている理由を、所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。出題者側が想定している解答の分かりやすい、平易な問題でした。
〔問題2〕「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数資料を組み合わせながら説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。参考にしなければならない資料は多いものの、こちらも解答の方向性が明快で、平易でした。
会話文や資料が過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であるため、2問とも難易度は高くありません。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。

【大問3】「まさつ」について調べる実験を題材にした問題
ここ3年連続していた、小問が2問あり、それぞれに設問が2つある実質4問の問題構成から一変、小問が2問、設問も1つずつの実質2問構成となり、問題量が大幅に減りました。2問とも記述の要素を含みますが、分量がそれほど多くもないため、単純に負担が減ったと考えられます。実験結果の考察が中心で、計算が必要な問題はありませんでした。

〔問題1〕は、ペットボトルのキャップにつけられたみぞのまさつによる効果を、モデル化した実験で確かめる問題です。実験の内容そのものは結果も素直で分かりやすいものではありますが、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで完全な解答を書く観点を持たずに、ぱっと解答をしてしまうと、要素が不足して減点となりうる、問題文の読解力で点数の分かれる問題でした。
〔問題2〕は、斜面をすべり下りる物体の摩擦力が、接地面の素材にどのような影響を受けるかを、実験から明らかにする問題です。複数の条件が設定されているので、対照実験の考えを使うことが必要になりました。実験の内容そのものは比較的分かりやすいものであったため、対照実験の仕組みの理解とそれを言語化できるかどうかが得点の肝でした。

適性検査Ⅰ

【出典】
吉永明弘「はじめて学ぶ環境倫理 未来のために『しくみ』を問う」による

【出題形式】
2000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2題、作文1題の例年と変わらない出題です。
作文については前年度同様、設問の中に条件を記載する形で出題されました。また読解問題の総字数は最大125字、作文が最大500字で、読解問題の字数は前年度と変化はないものの作文の字数が前年度より100字多くなりました。
テーマは「自然破壊と自然保護」に関するもので、前半は「なぜ自然を守らなければならないのか」ということについて2つの立場を示した上で筆者の見解を述べ、後半は「自然破壊」の意味とそれに対する「自然保護」のありかたについて筆者の意見が示されています。文章自体は読みやすく、わかりやすいものですが、作文の設問について具体例を思い浮かべるのが難しかったと考えられます。と大きな失点につながる可能性があります。

〔問題1〕筆者の主張を読み取る問題 55字以上65字以内
なぜ、「自然を守らなければならないのか」ということについての筆者の考えを問う問題です。
筆者は傍線部の問いかけの後に「アメリカの環境倫理学」における2つの理由を提示したあと、「このように考えていくと」とまとめて、「先の二分法にとらわれず、多様な理由をすべて尊重しながら議論していくほうがよりよい結論を生み出すように思われます」とこの段落から自説を展開します。傍線部からややはなれた箇所に筆者の見解がありますから、先の「二分法」にまどわされずに筆者の意見にたどりつけたかどうかで正答か誤答かがわかれると考えられます。

〔問題2〕本文の表現の内容を問う問題 50字以上60字以内
「自然破壊には二つのタイプがある」ということについて、二種類の「自然保護の違い」を答える問題です。この問題については「二種類の自然保護」を述べるのではなく、「違い」を述べる必要があります。本文では一つの自然保護については「保護」、もう一つの自然保護については「保全」が必要であると述べられていて、それに対する自然破壊の内容をとらえることが重要です。
一つは「保護」が必要なものとして「人間の開発や乱獲による自然破壊」、もう一つは「保全」が必要なものとして「人が手を入れなくなったことが問題でおきる自然破壊」があげられます。それぞれの対比をつかめば、それほど難しい内容ではありません。

〔問題3〕作文問題 460字以上500字以内
「『C型』の自然保護」について、「そこから読み取れる態度が学校生活においてリーダーとして目標を達成する上で、どのように生かせる」のか、を「掃除とは別の場面を具体的に挙げながら」述べるというものです。また、注意事項に二段落以上の指示があります。しかし、段落をつけずに書いた受検生はほとんどいないでしょうから、基本的な段落の条件はクリアしているはずですが、条件が想定しづらいと考えられます。
「『C型』の自然保護」の内容は「保全」にあたりますから、「人が手を入れてつくりあげた里山は末永く手入れを続けないといけない」という内容をもとに「人が作ったものを人の手で手入れを続ける」という態度がとらえられたとして、さらに「学校生活において」「リーダーとして」「目標を達成する上で」という条件の具体例を思いつけたかどうかが大きなポイントになります。
たとえば「学校のきまり」をリーダーとして設定する上で、「みんながきまりを守る」という目標を達成するために古くなったきまりを、みんなの考えをとりいれながら「たえず変更することを検討する」などの具体例が考えられますが、「学校生活」「リーダー」「目標達成」という細かい条件がきちんと読み取れたかが重要です。いずれにしても具体例を示すポイントを細かくとらえられているかが作文の問題の得点のカギとなると考えられます。

適性検査Ⅱ

【大問1】プログラミングを題材とした問題
大問1は前年度同様小問2題の構成でした。前年度は小問1つずつがさらに2つの問題で構成されていましたが、今回はシンプルな2題構成です。新学習指導要領の注目点の一つでもある、プログラミング的思考を題材にした問題となっています。上手に当たりをつけながら考えていかないと、大幅に時間がかかってしまいます。前年度ほどではありませんが、依然として高難易度の傾向が続いています。6年連続で出題されていた、立体図形に関する問題の出題は、今年度はありませんでした。
〔問題1〕は、ブロックを運んで倉庫におくロボットについて、指定された時間でブロックを全て倉庫におけるような、ロボットの移動する道順を考える問題でした。与えられた条件を満たすような道順を考える問題は、過去の都立中の適性検査でもよく出題されていましたが、設定の自由度が高く、当たりをつけながら1つ1つ試していく力が必要でした。また、ただ答えを求めるだけでなく、それを説明する記述力も求められ、限られた時間の中で解き切るのはやや困難な問題でした。
〔問題2〕は、4つの電球につながった5つのスイッチのうち、いくつかのスイッチを押したときの電球の付き方の様子から、どのスイッチがどの電球につながっているかを考える、論理パズルのような問題でした。会話文で丁寧に説明されている考え方の流れを、他の場合にも適用しながら考えていく力が必要な、いかにも適性検査らしいオーソドックスな問題でした。記述も必要ないため、比較的解答しやすく、ぜひ取り組みたい1問だったと言えます。

【大問2】日本の産業構造の変化をテーマにした問題
前年度、前々年度と同様に小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題も引き続き日本の産業について考える内容でしたが、前年度、前々年度は第1次産業を中心とした内容だったのに対し、今年度は日本の産業構造全体に関連する内容となっていました。
〔問題1〕は、3つの年代における産業別の就業者数と就業者数の最も多い年齢層の変化を読み取る問題です。
〔問題2〕は、6次産業化の利点を、農家の人たちの立場と農家以外の人たちの立場からそれぞれ考えて説明する問題です。どちらもひとつの問題で答えるべき内容が複数あり、また、資料のどの部分を使用して答えるかを受検生に選択させる形式となっています。会話文や資料自体は過年度の適性検査問題と比較しても特に複雑といえる内容ではないため、読み取りの難易度は高くありません。条件を守りながら問いに対して正確に答える力をみられる問題でした。

【大問3】ものが水滴をはじく様子および水分を吸収する様子を調べる実験を題材にした問題
前年度に引き続き小問は2問でした。各小問に2つの設問があり、実質4問の出題です。実験結果を読み取り、ふさわしい記号を選ぶ問題が1題、実験結果を読み取った分析結果を記述する問題が3題という内訳でした。
実験を読み解くうえで必要な数値については会話文中に与えられていたので、計算はあまり必要ありませんでした。前半は植物の葉が水滴をはじく様子を調べる実験が題材となりました。葉の形、葉の面積、水滴の写真、水の量の変化といった実験結果を比べ、水滴が転がりやすい葉と転がりにくい葉のちがいをどのように判断するか記述で答えることが最終的な目的です。
転じて後半は衣服が水分を吸収する様子を調べる実験が題材となりました。ポリエステルの布の方が木綿の布に比べて水をより多く吸収する理由を実験結果から考察する問題、シャツから蒸発する水の量を求める方法を説明する問題という構成でした。いずれも実験内容の把握と記述答案の作成に時間がかかったと思われます。

適性検査Ⅰ

【出典】
榎本博明「読書をする子は〇〇がすごい」による

【出題形式】
2000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2題、作文1題の例年と変わらない出題です。
一昨年から続いていた独立した条件を課しての作文の形式ではなく、設問の中に条件を記載する形で出題された点は昨年までと違う点です。また読解問題の字数が最大125字、作文が最大400字で2021年の作文の字数より減少していますが、全体の記述量はほぼ同じです。
テーマは「読書をすることによって、自分自身を見つめる機会を得たり、異質なものの見方や考え方に出会える」という、読書の効用を述べたものです。テーマとしてはよく取り上げられるものであり、読みやすかったと思いますが、設問の読み取り方を誤ると大きな失点につながる可能性があります。

〔問題1〕<筆者の主張に対する理由を問う問題 字数35字以上45字以内>
「自分の思いを書いたり語ったりすることが大事だ」ということの理由を答える問題ですが、以下の文に「それが自分の過去の経験や現在進行中の経験を整理することにつながるからだ」と書いてあるので、この部分をまとめればよいのです。「筆者」が「どのように考えているからですか」とあるので、「と考えているから」という文末にしてまとめるのがよいでしょう。ここはすぐ後に理由が記載されていることがわかれば問題なく答えられたはずです。
〔問題2〕<本文の言い換えを問う問題 字数70字以上80字以内>
「自分自身に出会う」とはどういうことかの言い換えを答える問題です。傍線部の直後からは「異質な知識やものの見方・考え方に出会うこと」の説明となっているため、傍線より前から説明されている該当箇所を発見できたかがポイントです。傍線部より少し前の段落に「このように」とまとめている段落に注目し、その内容をまとめて文末は「~こと」でしめくくります。
〔問題3〕<作文問題 字数360字以上400字以内>
「読書の効用を活かすには、関心の幅を狭めずに、あえていろんな領域の本を読むように心がけるのがよい」ということの理由と、その読書に対する筆者の考えがこれからの学校生活のどのような場面で活かせるかについて、読書以外の例をあげる問題です。最初の理由は問題2で示された内容の後に書かれていることがわかればすぐに書けたと思いますが、「いろいろな領域の本を読む」の読書以外の例という指示を読み落とさず思いつけたかどうかがポイントです。段落数の指定もありませんから、構成としては2段落でも問題ありません。過去問にしっかり取り組んだ受検生にとっては取り組みやすい問題だったといえるでしょう。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は昨年同様小問2題の構成で、さまざまな図形について考える問題です。1題を解くのにかかる時間が長く、難易度は昨年と変わらず高い問題でした。
問題1は、指定された素材からカードを作るとき、なるべく素材を無駄にせずに作成する場合どれだけのカードを作れるか、その際の余った素材がどれだけになるか、などを考える問題でした。与えられた素材から、指定されたものをどれだけ作り上げるか、という発想の問題は、過去の都立中の適性検査でも出題されたことがありますが、解法の方向性を自分で考える必要があり、会話文を正確に読み取る力や基礎的な計算力も求められました。また、ただ答えを求めるだけでなく、それを説明する記述力も求められ、限られた時間の中で解き切るのは困難な問題でした。
問題2は、正三角形を6枚組み合わせた形を転がす問題でした。問題用紙の中にある図を用いて実際に書き出す作業を行いながら答えを考える必要があります。条件に合う複数のパターンのうち、(1)は1パターンだけ試せば良いので正解しておきたい問題、複数のパターンを検証する必要があった(2)は、時間内に解き切るのは難度の高い問題と言えます。

【大問2】
大問2も昨年同様、小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。また、きっかけとなる話題も昨年の林業に引き続き第1次産業を取り上げています。
問題1は、魚の保存方法と気候を関連づける問題で、問題2は、3つの穀物の栽培に適した気候を考えさせる問題でした。また、問題2では3つの穀物から2つを選んで解答させるという昨年同様の3つの資料から、2つを選んで答えをつくる形式が踏襲されました。問題1・問題2とも、降水量と気温に注目する問題でしたので、思考の方向性を変える必要がなく、出題形式や問われている内容もオーソドックスであり、受検生には取り組みやすい問題でありました。

【大問3】
大問3は石けんと洗剤の汚れの落ち方を調べる実験を題材にした問題です。基本的な知識をもとにして、汚れの程度を観察結果や汚れの粒の数や重さ、加えた洗剤の量をもとにして思考判断し、理解したことがらを適切に表現する力が問われる問題です。実験結果を比べて特徴をつかんだり、数量の変化をとらえて説明したりする内容です。水溶液の濃さの考え方を活用する問題も含まれました。昨年に引き続き、小問2問でしたが各小問は2つの設問からなり、実質4問の構成でした。4問中3問が記述式の解答形式となっており、1題は計算により油汚れを落とすのに必要な洗剤量を求めるものでした。全体的に問題の文章量が多く記述量も多いので、問題内容の把握と答案の作成に時間がかかったと思われます。

適性検査Ⅰ

【出典】
稲垣栄洋「はずれ者が進化をつくる」による

【出題形式】
形式は2020年度からほとんど変化がありません。例年同様、1つの文章を読む問題です。40字~60字以内の読解記述問題が2つで2020年度よりやや字数が減りましたが、作文は460字以上500字以内と2020年度よりやや字数が多くなりました。

「雑草」をテーマに、その生育状況と人間の個性を重ねて個性のあり方について述べた文章です。
2020年度の環境問題にからめた問題と、自然を題材にしていることは同じですが、内容は「個性」に関するもので、都立中の作文問題ではよく題材としてとりあげられるものです。多くの受検生にとって取り組みやすい問題だったと考えられます。2020年度までの問題に取り組んでいる受検生にとっては安心して解答できる問題で、高得点勝負となりそうです。
問題1は、「思うようにいかない」ということの内容について問う問題です。ミスしやすいのは、つい「思うようにいかない」理由を答えてしまうことです。設問では「どのようなこと」か、きいていますから、本文の言い換えの内容を探します。字数から考えて、その理由も示す必要がありますが、「思うようにいかない=人間のいうとおりにならない=バラバラで扱いにくい」という部分に着目して解答をまとめることが大切です。
問題2は、明確に理由を問う問題です。本文ではオナモミを例になぜ「早く芽を出すものとなかなか芽を出さないもの」があるかを「遺伝子多様性」という言葉を使って説明しています。自然界では、答えのないことが多い→環境が変われば、どちらが良いかは変わる→どちらもあるというのが雑草にとっては正しい答えである、という筆者の見方が本文には示されています。この内容を見つけた受検生は、字数にあわせてこれらの内容をまとめることで解答を導けます。
問題3は作文問題です。2020年度と同様に3つの条件が示されています。この条件に従って書き進めていけば作文が完成できる形式です。
①第一段落では、「なぜバラバラであるかといえば、そこに意味があるからなのです」ということがどのようなことであるかを説明する。こちらも理由をきいている問題ではありません。バラバラであることにはどのような意味があるのかということです。このことは本文の最後の段落にあるように「生き残るために作り出した戦略」ですから、個性があることによって「生き残り」が可能になるということを示す必要があります。
②第二段落以降では「人間の世界」に置きかえたときに当てはまることを述べる。
第一段落が雑草について求めているのに対して、第二段落以降では人間のことについて考える必要があります。これは受検生のみなさんにとっては比較的とらえやすい例が多数あったのではないかと思います。身体的な差異、たとえば身長の差や体力の差、体育が得意な人もいれば、絵をかくのが得意な人もいるといったように多様な例が示せるはずです。見たこと、聞いたことなどの中からとありますから、自分の身近な例をとりあげればよいでしょう。
③、②で述べたことを今後どのように生かしていくかについて述べる。本文の内容から考えれば「個性」があることが生物にとって大切なのですから、自分の個性を生かして今後取り組んでいくことを示せればよいでしょう。自分が他人の「個性」を認めること、また、自分自身の「個性」をのばすことなどについて述べるなどが考えられます。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は、倍数・約数の決まりを使い、整数の成り立ちについて考えさせる問題でした。
問題1は、規則的に並んでいる整数の和を工夫して求める問題でした。九九の表の中から、ある決まった和になる範囲を見つける問題です。6つの数をそれぞれA~Fの記号に変え、その記号を使って解法を説明しなければなりません。ただ答えを求めるだけでなく、その求める過程を分かりやすく説明することが大切です。適性検査の問題を解きなれている生徒にとっては、それほど難しい作業ではないと言えるでしょう。
問題2は、かけ算の式に必要な数を、サイコロの面に当てはめる問題でした。九九の表の中にある数を、かけ算の式で表し、さらにそれらをサイコロの面に書く問題です。1~7までの数を式に必要なだけ取り出せるように、6つのサイコロに分けて書かなければなりません。また、その数を書くときの向きも正しくする必要があります。立方体についてたくさん練習してきたかが問われたと言えるでしょう。

【大問2】
大問2は、木材(林業)をテーマにした問題でした。林業に関するさまざまな資料から、林業が抱えている問題点と解決策について、自分なりの考察を加えていく問題でした。会話や資料から読み取ったことに基づき、自らの考えをわかりやすく伝える能力が試されました。2021年度は、例年と異なり小問が3題から2題になっていました。そのため、大問2にかける時間も例年より短くなったと思われます。
問題1は、資料を読み取り、記述する力をみる問題です。与えられた資料(図2)から、今後持続的に木材を利用する上での課題を読み取り記述する問題でした。ただし、「会話文や図1の人工林の林齢と成長に着目し」との条件がついていましたので、読み取る方向性は1つにしぼられます。
問題2は、複数の資料の関連性を考え記述する力をみる問題でした。与えられた3つの資料から2つを選び、それぞれの資料がどのような立場の(人々)の取り組みで、その2つの取り組みが「間ばつ材利用の促進」にどのように関連しているかを説明する問題でした。2つの資料の選び方によって、解答の作成のしやすさが分かれる問題でした。

【大問3】
大問3は、磁石の性質を題材にした問題です。実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。問題1は、磁石の性質を利用し、磁石のついた鉛筆を鉄板の上に置いてある磁石の上で浮くかを例の図から考察する問題でした。
問題2は、すでに行った実験とおもりをつり下げることができる最大の重さと、1辺3㎝以下の正方形ではシートの面積に比例することから、つり下げられる重さとおもりの個数を考察する問題でした。2021年度は問題3がなくなり小問が1題減りました。

適性検査Ⅰ

【出典】
保坂直紀「クジラのおなかからプラスチック」

【出題形式】
今年度も例年と同じく、1つの文章を読む問題形式です。
読解の問題が55字以上70字以内、55字以上70字以内の計2題、作文の問題が420字以上460字以内で1題でした。
文章は環境汚染をテーマとした説明的文章です。同校の適性検査Ⅰはコミュニケーションに関わる文章、科学に関わる文章が出題されることが多い印象でしたが、今年度は環境問題という身近な問題に関わる文章でした。受検生にとっては適性検査Ⅰ、Ⅱでよく目にする話題でしたので、練習十分な受検生は難なく、いつも通り書けたことと思います。文章の難度はほぼ例年通りで、読みやすいものでした。
問題1、問題2の読解は、いずれも昨年度と同等か若干易しい問題でした。読解問題トータルでの文字数はこれまで通りの130字前後でした。作文は、「筆者の意見をふまえて、テーマに対する自分の考えを述べる」形式と「筆者の意見に対して、自分の意見を述べる」形式と2パターンがこれまでに出題されていますが、今年度は前者でした。文字数は昨年度より1割減でした。作文内にまとめる読解の難度が、例年よりも平易で、題材としてもオーソドックスなものでしたので、基本の書き方が身についている受検生であれば、高い点数を取ることも可能です。全体的に得点しやすい問題だったため、高得点勝負かと思われます。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は割り算の余りに注意しながら、約束・ルールに従って作業する問題です。
問題1は縦50cm横40cmの画用紙6枚を、縦2m横1.4mのパネルに規則的に貼るときの、はしと画用紙、画用紙と画用紙の間の長さを答える問題です。
問題2は横向きの画用紙38枚と縦向きの画用紙21枚をパネルの両面に約束通りに貼ったときに必要なパネルの枚数を答える問題です。
問題3は正八面体の辺上をさいころの目と〔ルール〕に従って進み、ゲームが終わったときの点数を答えさせたり、ある得点になったときの目の出方を答えさせたりする問題です。
特別な解法や知識は必要ありませんが、問題をよく読み、決まりに従えるかがポイントになります。
【大問2】
大問2は、乗合バスに関する資料から、自分の考えを書く問題でした。解答はひとつに限られず、自分の考えが論理的に説明できているかが問われました。
問題1は、乗合バスの合計台数の移り変わりや乗合バスが1年間に実際に走行したきょりの移り変わりを、乗合バスに関する主な出来事と関連付けて自分の考えを書く問題でした。
問題2は、ノンステップバスの設計の工夫にはどのような役割が期待されているのか、自分の考えを書く問題でした。
問題3は、「バス優先」の車線や「公共車両優先システム」の課題について、資料をもとに自分の考えを書く問題でした。
【大問3】
大問3は、車の模型を動かす実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。会話文をよく読み論理的に考察する力が問われました。
問題1は、プロペラとモーターとかん電池を組み合わせた車の模型の重さについて、プロペラを回す前後の重さをそれぞれ計算する問題でした。
問題2は、モーターの重さやプロペラの長さの組み合わせによって、車の模型の速さがどのように変化するかを実験結果から考察する問題でした。
問題3は、ほを立てた車に角度を変えて風を当て、車の動きに関して考察する問題でした。

適性検査Ⅰ

出題形式:例年と同じく、1つの文章を読む問題形式です。
読解の問題が60字以上70字以内、50字以上60字以内の計2題、作文の問題が460字以上500字以内で1題でした。
内容:文章は「ロボット、AI」をテーマとした説明的文章です。
同校の適性検査Ⅰはコミュニケーションに関わる文章、科学に関わる文章が出題されることが多く、今年度は科学に関わる文章でした。ロボットやAIが進化をし、これまでのペットや人間が担っていた役割を果たしていく中で、反対に人間がロボット化していく危険性を述べています。文章の難易度はほぼ例年通りで、読みやすいものでした。
問題1・問題2の読解は、いずれも昨年度と同等か若干易しい問題でした。読解問題トータルでの文字数はこれまで通りの130字前後でした。作文は、「筆者の意見をふまえて、テーマに対する自分の考えを述べる」形式と「筆者の意見に対して、自分の意見を述べる」形式と2パターンがこれまでに出題されていますが、今年度は後者でした。文字数は昨年度と全く同じです。作文内にまとめる読解の難易度が、例年よりもやや高く、題材としても少しめずらしいものですが、基本の書き方が身についている受検生であれば、高い点数を取ることも可能でしょう。全体的に得点しやすい問題だったため、今年も適性検査Ⅱのできが勝負のカギとなりました。

適性検査Ⅱ

大問1は、会話文中のさまざまな条件を読み取り、作業する問題でした。
問題1は、1枚の紙を折ってしおりを作成する際、紙を折る前後で各ページの位置と各ページに書かれる文字の種類と向きを問う問題でした。
問題2は8×8のマス目に模様を書いた際、模様の表現の仕方についての約束を読み取り、条件に当てはめる問題でした。
問題3は、立方体にかかれたマス目の上を、すごろくのようにおもちゃを動かす手順を考える問題でした。各小問の難易度は高くありませんが、それぞれの小問の問題文が長く、条件を速く正確に読み取った上で、丁寧に作業する処理能力を問われた問題でした。
大問2の問題1は日本人の出国者数と、日本への外国人の入国者数の移り変わりを表すグラフからわかることを考察する問題でした。
問題2は外国人旅行者が増えている地域の具体的な取り組みを資料から考察する問題です。
問題3は案内図記号の役割を考察する問題で、昨年度と比べて解きやすい問題が多く易化しました。
大問3は「紙の性質」についての問題でした。
問題1が「和紙とその他の紙の吸った水の重さを比較」をする問題で、昨年度と同様に単量当たりの数字を求めて比較します。
問題2は「紙のせんいの向き」を実験結果から推察する問題です。実験結果をどのように判断すれば良いか会話文で説明されていました。
問題3は「のりを作成する最適な水の重さ」について考察する問題です。すでに行った実験の結果から、次に行う実験の結果の仮定を考えて、目的とする水の重さを考察します。いずれも実験結果を読み取る力を必要とする問題でした。

適性検査Ⅰ

出典:榎本博明「『やさしさ』過剰社会 人を傷つけてはいけないのか」より

出題形式:例年と同じく、1つの文章を読む問題形式です。
読解の問題が40字以上50字以内、60字以上70字以内の計2題、作文の問題が460字以上500字以内で1題でした。
内容:文章は「やさしさ」をテーマとした説明的文章です。
昨年度は理科的な文章でしたが、その前の年度までの傾向と同様、広い意味でのコミュニケーションについての文章でした。文章の難易度はほぼ例年通りで、読みやすいものでした。本当の意味でのやさしさとは何かについて、色々な観点からの説明が書かれています。
問題1・問題2の読解は、いずれも昨年と同等か若干易しい問題でした。昨年度は問題2より問題1の方が、文字数が多く、今年はそれがひっくり返っていますが、トータルの文字数は変わりません。作文は、「筆者の意見を踏まえて、テーマに対する自分の考えを述べる」という出題形式で、これまでも同校で出題されてきた問題です。文字数が昨年度よりも若干増えましたが、受検生にとっては気になるレベルの変化ではなかったでしょう。題材としても書きやすいものだったので、高い点数を取る受検生も出てくるはずです。昨年度はそれ以前と比べて適性検査Ⅰの採点が厳しめになりましたが、全体的に得点しやすい問題だったため、今年も適性検査Ⅱのできが勝負のカギとなりました。

適性検査Ⅱ

大問1はさいころを扱った問題でした。受検生にとってはなじみ深い題材です。
問題1は展開図を書く問題で、実際にさいころの面のスケッチを描くものです。問題2はさいころの目を使って式を立てる問題でしたが、ルールに従うことができれば答えることは簡単です。問題3は鏡に映したさいころについて考える問題です。6の目以外が4個ずつ映ることに気が付けば正解にたどり着ける問題です。
大問2は「日本のくらしと変化」をテーマにした問題で、昨年同様、小問は3問でした。
問題1は距離の違いによる高さの見え方の変化について考察する問題、問題2は東海道新幹線の路線の沿線の都市と人口、または工業地帯の関係性について考察する問題、問題3は割合の計算を行い、その計算結果をグラフに表し、その結果の数値を資料と関連させて考察する問題でした。昨年と同様に基本的な問題ですので、資料を読み取って考察する力と割合計算のスピードと正確性が重要なカギとなりました。
大問3は「花粉や黄砂の測定結果」について考察する問題です。
問題1が「花粉を顕微鏡で観察し、花粉の数を求める」問題で、単位量当たりの計算を必要とします。問題2は黄砂を観測する装置の仕組みの説明から、計測結果を考察する問題です。初めて知る観測装置なので、会話文や図を読み仕組みを理解する力が必要です。問題3は「日本で黄砂が観測される原因と気象状況の関連」について考察し記述する問題です。身近な話題ですが、問題文や資料から観測の方法や分析の仕方を読み取る力が必要な問題でした。

適性検査Ⅰ

出典:文章 石井誠治『樹木ハカセになろう』より

出題形式:例年と同じく、1つの文章を読む問題形式です。読解の問題が60字以上70字以内、40字以上50字以内の計2題、作文の問題が420字以上460字以内で1題でした。
内容:文章は「サクラ」をテーマとした説明的文章です。ここ数年続いていた随筆と文章ジャンルは異なりますが、文章の難易度はほぼ例年通りで、読みやすいものでした。サクラの一年の通しての変化と、その葉をエサとするモンクロシャチホコを通して、現代の人間が自然へ無理解となっていることを述べています。問題1・問題2の読解は、いずれも昨年と同等か若干易しい問題でした。作文は、「筆者の意見を踏まえて、テーマに対する自分の考えを述べる」という出題形式で、これまでも同校で出題されてきた問題です。題材としても書きやすいものだったので、例年通りの高得点勝負となるでしょう。全体を通して見ても、適性検査Ⅰは得点しやすい問題だったため、今年も適性検査Ⅱの出来が勝負のカギとなりました。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成でした。大問1は「図形」がテーマで、立体の見方・対称性・規則性を見つける問題です。簡単な例を具体的に書き出して、作業をする中で解答を導き出していけるとよいでしょう。特に問題1は必ず得点したいところですが、同じ大きさの正三角形を答えるというようなミスは禁物です。問題2は、Aグループの枚数が(3の倍数+1)、Bグループが(3の倍数)になっていることに注目し、その差の1は3本の対角線の交点がある「き」の三角形であることに気が付ければスピーディーに解答にたどりつけます。問題3は問題文の誘導に従って規則性を検証する問題です。
大問2は「野菜の栽培と流通」をテーマにした問題でした。昨年同様、小問は3題でしたが、「資料を分析・考察し、記述する問題」と「割合を計算する問題」が出題され、一昨年と似た傾向でした。資料を読み取って考察する力と割合計算のスピードと正確性が勝負の鍵でした。
大問3は「時間を計ることを題材にした理科実験」を考察する問題です。問題1が「太陽、ふり子、ろうそく」のいずれかの法則から時間が計れる理由を記述する問題で、教科書範囲の知識が必要とされました。問題2は実験結果を考察し、比例の関係を導く問題でした。問題3は対照実験について考察する問題でした。いずれも、決して目新しいものではなく、あわてずに考えれば正解にたどり着ける問題です。

適性検査Ⅰ

出典:文章 清水真砂子「大人になるっておもしろい?」より
出題形式:例年と同じく、1つの文章を読みとく問題形式です。50字程度の要約が2題、500字程度の作文が1題出されました。
内容:文章は「質問」をテーマとした随筆です。口にしている言葉をそのまま文章にしたような軽快さが特徴の文章でした。筆者が外国の方と(しかし、外国人ということを意識せず、あくまで一人間として)接し、学んだことについて書かれています。その学んだこととは、コミュニケーションについてのことだという内容であり、多くの点で昨年度の問題と共通している部分がありました。問題1・問題2の要約は、いずれも簡単ではありませんが、都立中の要約問題としては標準レベルです。多くの受検生が少なくとも部分点は得ることができる問題でした。作文は、「筆者の意見を踏まえて、テーマに対する自分の考えを述べる」という出題形式で、これも同校で出題されてきた問題です。全体を通して見ても、適性検査Ⅰは得点しやすい問題だったため、例年よりも適性検査Ⅱの出来が勝負のカギとなりました。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成でした。大問1は「渋滞」を題材にした作業中心の問題で、ルールと条件に従い作業を行えば平易に解答を導き出すことができました。必ず得点しなければならない問題です。
大問2は「資料の読み取り」の問題でした。小問は3つあり、そのうちの1つが「歴史」をテーマとした問題だったため、驚いた受検生も多かったのではないでしょうか。今回の大問2では、3つの小問を通して「資料内容を正確に読み取る」「関連のある事柄を探す」「条件に沿って考える」という力が試されています。取り組む問題を選び、解きやすい問題を確実に得点することが高得点のカギとなりました。
大問3は「アゲハチョウの幼虫のからだのしくみと蛹化する環境についての実験」を考察するものです。資料から幼虫の体のしくみを考える問題が1問、実験結果から結論を導き説明する問題が3問の、小問3題で構成されています。

適性検査Ⅰ

出典:須賀敦子「塩一トンの読書」より
出題形式:例年と同じく一本の文章を読む問題形式です。問題数は昨年と同じく3問で、しかし1問目と2問目がどちらも要約となりました。
内容:ジャンルは以前の同校の定番であった随筆で、一昨年、昨年のような説明的文章ではなくなりました。テーマも近年続いていた「書く」ではなく、「読む」となりました。要旨を読み取り切るには少し難しいレベルの文章でしたが、問題で問われている部分は比較的内容を抑えやすい部分でした。問題1、問題2はどちらも部分要約ですが、これまでの同校の要約問題と同じく文字数が多めなので、必要な情報を集め切ること、またそれらをスピーディにまとめることがポイントでしょう。作文も例年の傾向通り条件の多い意見文であり、問われているものを全て入れ込んだ上で作文をまとめられるかが勝負でした。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成で、大問1は「うるう年」を題材にした計算中心の問題でした。うるう年の計算法がきちんと説明されていたので、受検生は得点しやすかったはずです。
大問2は会話文形式で、図が5つに表が1つ小問3つで5ページというボリュームのある問題構成でした。話題自体は東京オリンピックをテーマに展開しますが、各小問はそれぞれ人口推移と世代別割合、物価の変化、地図の読み方に関する問題でした。どの問題も資料を読み取れば得点できる問題でしたが、計算・解答では条件があり、それぞれの設問で細かい条件が多く提示されているので、条件を丁寧に確認して答える必要があります。
大問3は「発泡スチロールでできた立体を水中に沈め浮力により水面上へ打ち出す実験」について考察するもので、小問3題で構成されていました。

適性検査Ⅰ

全体的な構成としては昨年度のものを踏襲し、大問四つの構成で、理系、理系、文系、文系という並びでした。ただし、文系の問題に大きな変化があり、立川国際中の特徴であった国語型の問題の出題が減り(ほぼ社会型であるものの、国語型と言えるものが一問)、ほとんどが社会型の問題となりました。しかも、それが社会の知識によるものが増え、さらに歴史に関わる問題が出題されるなど、昨年度に引き続き、いくつかの変化のみられた問題でした。全体の難易度としてはそれほど高くはなく、例年よりも易しくなったと言えるでしょう。単純な難易度よりも、出題分野の変化に動揺せずに対応出来たかどうかがカギとなるでしょう。
大問1 立体と分数の足し算を合わせた問題で、題材として、ボールとひごを使った立体が用いられています。これは平成21年度のものと共通していました。問題1は四種の分数を使って整数を作る問題です。問題1としてこの条件が出されているものの、以降の問題2・問題3でも同様の条件が付随してくるため、この問題が出来なかった場合には、必然的に大問1自体が不正解となってしまいます。問題2も分数の足し算であるのに加え、鏡に映った像についての問題でした。しかし、この二問の難易度は低めで、落としてはいけない問題でした。難易度の上がるのは問題3。分数の足し算+鏡に映った像、という問題の発想は問題2と共通ですが、条件が問題2よりも厳しくなっているため、解答がより狭められています。
大問2 昨年度と同じく、ここが最も難しい大問でした。11の倍数の作り方が資料として示されていて、それを基に大きな数の11の倍数をつくる問題でした。問題1は6けたで空欄を埋めるだけ、問題2は7けた、問題3は9けたで、なおかつ1~9全ての整数を一つずつ用いる、とそれぞれ条件が複雑になっていくものの、11の倍数をつくる、という部分は共通です。そのため、こちらも最初に資料に書かれている条件が理解できなければ、全ての問題でお手上げとなってしまいます。条件を理解出来たとしても問題2、問題3はそれぞれ時間をかけて答えを見つけるしかない試行錯誤型の問題で、早い時間にこの問題に手を出してしまった受検生は後の問題を解ききることは出来なかったでしょう。例年の点数状況から鑑みると、問題2が出来る受検生が大きく合格に近づき、問題3は出来なくて構わない(合格者も全員正解出来ているとはかぎらない)と言えるでしょう。 大問3 貿易についての問題。表が二つ出てくるにも関わらず、それらの表は問題自体とほとんど関係がないというめずらしい問題でした。問題1は輸入・輸出についての語彙の問題で、明確に「地理」の知識についての問題でした。この地理についての知識を問う傾向は昨年度から見られます。ただ、地理の知識というほど専門性の高いものではなく、ごく普通に小学校で習う知識で解ける問題です。問題2も同じく何かを使うのではなく、自分の頭の中から答えを出すだけの問題でした。世界全体の総輸出量と総輸入量の関係についての問題で、問題1で問われている輸入・輸出ということがどういうことかを分かっていれば答えを出すことは容易でした。この大問は落としてはいけない問題だと言えるでしょう。
大問4 社会系の問題。例年であればここは国語型の問題が出されるところですが、今回は社会の問題となりました。問題1は日本の世界文化遺産の傾向を読み取る問題。表を読み取る問題ですが、表の中の情報だけでは答えを出すのは難しく、こちらも地理の知識を持っていることを前提にした問題と言えます。問題2は自然遺産の登録に必要な条件で、こちらも分野としては地理に当たるものの、会話文の中に情報は出てくるため、例年の国語型の問題に当たるものです。問題3が今回の立川国際中の適性検査Ⅰにおいて最も特徴的な問題で、富岡製糸場と鎌倉のいずれが文化遺産にふさわしいか、という問題でした。情報は会話文中や資料として出されているものの、明確な歴史分野の問題は初めての出題であり一般的に歴史の分野にあまり時間を費やしていない都立中受検生にとっては、戸惑いを覚えるであった可能性があります。

適性検査Ⅱ

藤原与一『私たちと日本語』 昨年度は作文問題が出題されず、すでに書かれている文章を指示に従って書き直す問題形式で大きな衝撃を与えた立川国際中の適性検査Ⅱですが、今回は一昨年までの出題形式に戻りました。ただ、昨年度のものは初見であってこそ出来不出来の分かれる問題ですので、今回の変更は予想通りのものでした。問題1は百字以内の要約で、他校と比べて字数が多めなのは例年通りです。問題2も同じく要約の一種で、例年の要約一問、作文一問という形式からすると、この問題の存在自体が一つの変化です。しかし、字数は六字から十字と少なく、要約というよりも国語の読解問題の一種であり、内容もそれほど難しいものではありません。問題1の要約が出来るレベルであれば問題2も正解することが出来たはずです。問題3は適性検査ではポピュラーなタイプの作文。本文の筆者の意見を踏まえて書く作文が出題されました。形式自体は標準的であるものの、「言語生活」という抽象的なテーマであったため、本文を読み取れなかった受検生は書くのが難しかったでしょう。しかし都立中の作文としては本文のレベルも、作文で求められているものも標準的な内容であり、ここまで準備をしてきた受検生であれば、きっと書ききることができたと思います。 多少の形式の変化はあったものの、適性検査Ⅱはほぼ例年通りの難易度だったと言えます。

ボーダーライン

勝負の分かれ目は例年通り適性検査Ⅰの理系ですが、文系の変化によって点を落とした受検生も少なくないでしょう。しかし、一つひとつの問題の難易度は例年より低めでした。また、作文は典型的な都立中の出題形式でしたので、しっかり点数をとりたいものです。総合では60%、それぞれⅠで50%、Ⅱで70%以上は確保したいところです。

適性検査Ⅰ

全体的な変更点として、例年と大問の順序がひっくり返った形になりました。例年は大問1の国語系からはじまり、大問2で資料読解、大問3、4が理系、という順序でしたが、今年度は理系、理系、資料読解、国語系、という並びになりました。
[1]立体と、てこの発想を合わせた問題でした。理系の問題の中では易しめで、例年の大問3のようなイメージです。会話文の中ではっきりと条件が述べられている上、書かれている図も分かりやすいものであったため、多くの受検生が正解を出すことができたでしょう。ここは落としてはいけない問題でした。
[2]問題1は数字根についての問題。数字根とは、ある数値を表す数字を全て足し、結果の数値の数字を全て足し、という操作を繰り返し、最終的に得られる一桁の数字のこと。作業は難しいものではありませんが、若干ひらめきが必要であり、さらに数回計算をする必要もあるため、算数が苦手な子は少してこずったかもしれません。
問題2、3、4は箱の中に数字を入れると、一定の計算処理をした上で数字が出てくる、という仕組みを使った問題。過去に他県の適性検査で類題が出題されたことがあります。計算力がある子は解くことができたでしょうが、算数が苦手な子には厳しかったかもしれません。ここが合否の一つの分かれ目となるでしょう。
[3]棒グラフ、円グラフ、表などを用いた資料読解。問題1は読み取った数値を使って計算し、さらに資料中の一つの国についての特ちょうを読み取る問題。計算力と複数の資料を合わせて読む力が必要でした。問題2は気温と降水量をまとめた表を使う問題だったのですが、表の読みとりと言うよりむしろ会話文から情報を集める国語よりの問題でした。ただし、社会の知識があれば比較的解きやすく、これまでの立川国際中の問題と比べても珍しい傾向(明確に「地理」の知識に関わるような問題)だったと言えます。
[4]国語系の問題。問題1、問題2ともに会話の中から必要な情報を集め、それをまとめる問題。これまでの国語系の問題と比べて「発想力」が必要でなくなったため、点数は取りやすくなったと言えるでしょう。全体的に難易度は若干易しくなったか例年並みというところでした。

適性検査Ⅱ

池上彰「わかりやすく〈伝える〉技術」
文章のジャンル、問題の形式ともにこれまでと大きく変わりました。TVなどでも活躍している、大学教授でありジャーナリストでもある池上彰さんによる説明的文章です。「わかりやすい文章の書き方」について書かれている文章で、当然この文章自体も大変読みやすいものでした。要約の問題の肝となる、文章の具体情報と抽象情報の判別もしやすく、要約でも多くの受検生が点数をとることができたでしょう。
問題1は、筆者が「キャスターとしてニュースの内容をわかりやすく視聴者に伝えるために実際にやっていたこと」について150字以内での要約。「実際にやっていたこと」なので、全文要約というよりも若干具体寄りの情報をまとめる要約問題となります。文章が読みやすく平易である分、この問題も例年の要約問題より易しかったと言えるでしょう。 問題2が、最も大きな変更点であり、一般的な意味での「作文」ではなくなりました。問題1でまとめた「文章の書き方」を参考に、資料として書かれている作文を420字以内で書きなおす、というもので、端的に言えば「発想力」が不要なものになりました。内容を考える必要がないぶん得点をとりやすく、総合的にみて例年の適性検査Ⅱよりも極めて易しくなったといえるでしょう。

ボーダー

他の都立中の作文と比べ、平均点の高い立川国際中の適性Ⅱですが、例年にもまして易しくなった今年は、8割はとりたいところです。勝負の分かれ目は例年通り適性検査Ⅰの算数系。Ⅰで65%、Ⅱで70%以上は確保したいところです。

適性検査Ⅰ

大問4題の構成でした。2011年度より理科分野が出題されるようになり、2012年度も大問3が理科をテーマにした出題となりました。ただし、「理科の授業で生きものについて調べる」という出だしでありながら、算数の図形に関する知識だけで十分解ける問題となっており、理科分野と関連させながらも、数理的考察力を問う問題となっています。大問2が社会系の問題となりますが、資料の読み取りだけではなく、割合に関する出題もありました。ここでは与えられた資料を一つひとつ丁寧に見ていく力と、割合の基本的な計算力が求められています。
全体的に見て、算数的要素の出題が多いため、計算力を高めることが重要です。計算練習の他、割合や整数の問題を数多く解くことを心がけましょう。

適性検査Ⅱ

2012年度の出題は、大きな変更があった2011年度と同様の「文章の要約+作文」でした。素材は自転車での世界一周を果たした筆者による随筆。昨年度の「自分が建築家だったら」という仮定をもとに書くものから、「あなた自身が他者と接する際に大切だと思うこと」というごく一般的な意見文へと変わりました。ここではあまり大きく点数に差は出ていないと思われます。
一方、【問題1】の要約は難度が上がりました。「文中の具体例を含めて書く」という特殊な問題で、文字数も180~200字と一般的な要約よりも長く、ここで戸惑った受検生は多かったでしょう。作文は易化、要約は難化しましたが、題材の文章が読みやすかった分だけ、やや昨年度よりも点数を取りやすい問題であったと言えます。