適性検査分析

東京都立
南多摩中等教育学校

基本情報

南多摩中等教育学校 外観

学校紹介

明治41年 東京府立第四高等女学校開校/昭和25年 東京都立南多摩高等 学校/平成22年 東京都立南多摩中等教育学校

住 所

東京都八王子市明神町4-20-1

電話番号

042-656-7030

アクセスマップ

過去の入試データ

募集人員

年度 2020 2021 2022 2023 2024
80 80 80 80 80
80 80 80 80 80
160 160 160 160 160

応募者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
400 374 331 308 283
463 436 348 354 313
863 810 679 662 596

受検者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
394 368 321 303 277
458 422 342 344 310
852 790 663 647 587

合格者数

年度 2020 2021 2022 2023 2024
80 80 80 80 80
80 80 80 80 80
160 160 160 160 160

実質倍率

年度 2020 2021 2022 2023 2024
4.93 4.6 4.01 3.79 3.46
4.93 4.6 4.28 4.30 3.88
5.33 4.94 4.14 4.04 3.67

適性検査分析

適性検査Ⅰ

【出典】
文章1 佐々木貴教「地球以外に生命を宿す天体はあるのだろうか?」による
文章2 信原幸弘「『覚える』と『わかる』 知の仕組みとその可能性」による

【出題形式】
文章が2題の形式で、読解問題が2題、作文問題が1題の例年と変わらない出題です。
昨年度は、以前の傾向のように文章1題に戻りましたが、今年度は一昨年度のような文章2題の形式です。読解問題の総字数も例年と大きくは変わらず、作文問題は300字以上400字以内の指定で昨年度と同じでした。作文問題の出題形式は引き続き、手順を守って書かせる出題となっています。
テーマは文章1、文章2ともに「ものごとを客観視すること」、「一人称と三人称の視点でものごとを見ること」について述べられています。文章2の内容自体の抽象度は高かったと言えますが、過去にも同様のテーマが南多摩中で出題されています。

〔問題1〕<傍線部の因果関係を問う問題 字数45字以内>
「人間のきわめてすぐれた能力」が、文章1においてどのように生かされたかを答える問題です。傍線部が文章2にありますので、文章横断型の問題です。文章2から、「人間のきわめてすぐれた能力」とは、傍線部の後ろより「主観的世界を超えた客観的世界を手にすること」という説明があります。それと同内容が述べられている部分を文章1で探し、それがどのように生かされているかという問いに合う形で解答を作成していきましょう。文章1において、「天文学」の効用について何ヵ所かまとめられていますが、指定字数は長くありませんので、適切に要約する力も求められます。こちらはやや差がつく問題だったと言えます。

〔問題2〕<本文の言い換えを問う問題 字数70字以内>
「いま、ここ」から世界を捉えてこそ、「いま、ここ」から世界に働きかけることができる、と筆者が述べていることについて言い換えて説明する問題です。「一人称(一人しょう)」という言葉を使うという条件がありますので、ここを手がかりにしていきましょう。傍線部自体がやや比喩的な表現のため、前後から文意を捉えると、「一人称の主観的な世界で捉えることが、三人称の客観的な世界への働きかけを可能にする」ということが分かります。問題文に「文章2の具体例を用いて」という指示もありますので、傍線部後の椅子・机の見方の例を使いながら、採点者に十分に伝わるよう分かりやすく言い換えをしていきましょう。文章を丁寧に読み込み、解釈していけばわかる問題ですので、確実に正解したい問題でした。

〔問題3〕<作文問題 字数300字以上400字以内>
「文章1と文章2の内容をふまえて、学校生活や日常生活のなかで、何を大事にし、どのように行動していこうと考えるか」について書く問題です。例年通り手順が示されていますので、その内容に従って書き進めていきましょう。手順1では「文章1と文章2を読んでわかったこと」を書きますので、文章内容を要約します。「それぞれ」という指定はないので、「わかったこと」を一つにまとめてしまっても良いでしょう。手順2、3では文章内容をふまえて、「あなたが大事にすべきだと考えたこと」と「その理由」、「学校生活や日常生活のなかでどのように行動していこうと考えるか」を述べていきます。両方の文章のテーマの通り、今回は「ものの見方」について述べていく必要があります。三人称的な視点はものごとの広がりを教えてくれますが、三人称的に見ることができるようになるためには、一人称的な視点も欠かせません。どちらが正しいというような二元論的に書くのではなく、双方の視点を持ち合わせてどういった生活を送っていきたいのかを具体的に述べていきましょう。

適性検査Ⅱ

【大問1】デジタル数字を題材にした問題
大問1は前年度同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものでした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度になっていました。

〔問題1〕マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、できるだけ早くすべての作業を終わらせます。それぞれ作業にかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。

〔問題2〕ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作」「マグネットを取る操作」「数字の書かれたボードを180度回す操作」「2枚のボードを入れかえる操作」を組み合わせて考えます。回転と入れかえをいかに効率よく使えるかがカギとなりました。

【大問2】公共交通機関の利用について考える問題
令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。

〔問題1〕は、公共交通機関の利用割合が偏っている理由を、所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。出題者側が想定している解答の分かりやすい、平易な問題でした。

〔問題2〕は、「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数資料を組み合わせながら説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。参考にしなければならない資料は多いものの、こちらも解答の方向性が明快で、平易でした。
会話文や資料が過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であるため、2問とも難易度は高くありません。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。

【大問3】「まさつ」について調べる実験を題材にした問題
ここ3年連続していた、小問が2問あり、それぞれに設問が2つある実質4問の問題構成から一変、小問が2問、設問も1つずつの実質2問構成となり、問題量が大幅に減りました。2問とも記述の要素を含みますが、分量がそれほど多くもないため、単純に負担が減ったと考えられます。実験結果の考察が中心で、計算が必要な問題はありませんでした。

〔問題1〕は、ペットボトルのキャップにつけられたみぞのまさつによる効果を、モデル化した実験で確かめる問題です。実験の内容そのものは結果も素直で分かりやすいものではありますが、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで完全な解答を書く観点を持たずに、ぱっと解答をしてしまうと、要素が不足して減点となりうる、問題文の読解力で点数の分かれる問題でした。
〔問題2〕は、斜面をすべり下りる物体の摩擦力が、接地面の素材にどのような影響を受けるかを、実験から明らかにする問題です。複数の条件が設定されているので、対照実験の考えを使うことが必要になりました。実験の内容そのものは比較的分かりやすいものであったため、対照実験の仕組みの理解とそれを言語化できるかどうかが得点の肝でした。

適性検査Ⅰ

【出典】
西林克彦「知ってるつもり『問題発見力』を高める『知識システム』の作り方」による

【出題形式】
2000字程度の文章が1題の形式で、読解問題が2題、作文問題が1題の例年と変わらない出題です。
ただし、ここ2年続いていた文章2題ではなく、以前の文章1題形式に戻りました。作文が300字以上400字以内と前年度の作文の字数より減少していますが、作文の出題形式は引き続き、手順を守って書かせる出題となっています。
テーマは「知っているつもりになっている人が多いため、知識を身に付けることが大切である」という知識を増やすことの重要性を述べたものです。よく目にするテーマではあるので、文章自体の読み取りはしやすかったと思いますが、手順の読み取りが不十分なまま答案を作ってしまうと大きな失点となってしまいます。

〔問題1〕<筆者の主張に対する理由を問う問題 字数50字以内>
「自分のわかっていないことを見つけ出すのは、ごく容易なことではない」理由を答える問題ですが、直後に「その理由には、大ざっぱにいって2種類あります」と書いてあるので、これ以降出てくる2つの理由をまとめればよいです。ただ理由にあたる説明が本文中に広く書かれているため、字数に収まるように要約する力が求められており、表現をまとめづらく、差がつく問題です。

〔問題2〕<本文の言い換えを問う問題 字数40字以内>
筆者の考える「知識システムを整備すること」を言い換えて説明する問題です。
手順として「生み出す」という言葉が指定されており、一つ前の段落にこの「生み出す」という表現を使った説明が見つかるため、その内容を使ってまとめ文末は「~こと。」でしめくくります。ここは指定された言葉から説明されている場所がわかれば問題なく答えられるため、必ず正解したい問題です。

〔問題3〕<作文問題 字数300字以上400字以内>
「興味ある分野で物事を深く調べ考えていくうえで、日ごろからどのような知識を身に付け、それを生かしていきたいか」について書く問題です。
自分自身がこれまで身に付けた知識とそれを生かした経験をまずは書き、本文で筆者が述べている「知識」についての考え方を比較した上で、それをふまえてどのような知識を身に付け、生かしていきたいか、意見を発展させる必要がありました。すべて手順が示されているため、見落としてしまうと大幅な減点となってしまいます。過去問をしっかりこなしている受検生にとっては取り組みやすい作文だったといえます。

適性検査Ⅱ

【大問1】プログラミングを題材とした問題
大問1は前年度同様小問2題の構成でした。前年度は小問1つずつがさらに2つの問題で構成されていましたが、今回はシンプルな2題構成です。
新学習指導要領の注目点の一つでもある、プログラミング的思考を題材にした問題となっています。上手に当たりをつけながら考えていかないと、大幅に時間がかかってしまいます。前年度ほどではありませんが、依然として高難易度の傾向が続いています。6年連続で出題されていた、立体図形に関する問題の出題は、今年度はありませんでした。

〔問題1〕は、ブロックを運んで倉庫におくロボットについて、指定された時間でブロックを全て倉庫におけるような、ロボットの移動する道順を考える問題でした。
与えられた条件を満たすような道順を考える問題は、過去の都立中の適性検査でもよく出題されていましたが、設定の自由度が高く、当たりをつけながら1つ1つ試していく力が必要でした。また、ただ答えを求めるだけでなく、それを説明する記述力も求められ、限られた時間の中で解き切るのはやや困難な問題でした。

〔問題2〕は、4つの電球につながった5つのスイッチのうち、いくつかのスイッチを押したときの電球の付き方の様子から、どのスイッチがどの電球につながっているかを考える、論理パズルのような問題でした。
会話文で丁寧に説明されている考え方の流れを、他の場合にも適用しながら考えていく力が必要な、いかにも適性検査らしいオーソドックスな問題でした。記述も必要ないため、比較的解答しやすく、ぜひ取り組みたい1問だったと言えます。

【大問2】日本の産業構造の変化をテーマにした問題
前年度、前々年度と同様に小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題も引き続き日本の産業について考える内容でしたが、前年度、前々年度は第1次産業を中心とした内容だったのに対し、今年度は日本の産業構造全体に関連する内容となっていました。

〔問題1〕は、3つの年代における産業別の就業者数と就業者数の最も多い年齢層の変化を読み取る問題です。

〔問題2〕は、6次産業化の利点を、農家の人たちの立場と農家以外の人たちの立場からそれぞれ考えて説明する問題です。
どちらもひとつの問題で答えるべき内容が複数あり、また、資料のどの部分を使用して答えるかを受検生に選択させる形式となっています。会話文や資料自体は過年度の適性検査問題と比較しても特に複雑といえる内容ではないため、読み取りの難易度は高くありません。条件を守りながら問いに対して正確に答える力をみられる問題でした。

【大問3】ものが水滴をはじく様子および水分を吸収する様子を調べる実験を題材にした問題
前年度に引き続き小問は2問でした。各小問に2つの設問があり、実質4問の出題です。実験結果を読み取り、ふさわしい記号を選ぶ問題が1題、実験結果を読み取った分析結果を記述する問題が3題という内訳でした。
実験を読み解くうえで必要な数値については会話文中に与えられていたので、計算はあまり必要ありませんでした。前半は植物の葉が水滴をはじく様子を調べる実験が題材となりました。
葉の形、葉の面積、水滴の写真、水の量の変化といった実験結果を比べ、水滴が転がりやすい葉と転がりにくい葉のちがいをどのように判断するか記述で答えることが最終的な目的です。
転じて後半は衣服が水分を吸収する様子を調べる実験が題材となりました。
ポリエステルの布の方が木綿の布に比べて水をより多く吸収する理由を実験結果から考察する問題、シャツから蒸発する水の量を求める方法を説明する問題という構成でした。いずれも実験内容の把握と記述答案の作成に時間がかかったと思われます。

適性検査Ⅰ

<出典>
文章1:藤田正勝「はじめての哲学」による
文章2:寺田俊郎「ゼロからはじめる哲学対話―哲学プラクテイス」による

<出題形式>
昨年同様2つの文章を読み、その文章に関する問題を2題解き、問題3として作文を書く、という形式は変わりませんでした。字数は合わせて2700字程度で内容も比較的読みやすかったと考えられます。

問題1は「大きく変化する」理由を、本文中の表現を使って50字以内で説明する問題です。傍線部の前後をよく読むと答えが見えてきます。「大きく変化する」ものはパラダイムです。それは「支配的なあるいは規範になっているような見方、考え方」と言い換えています。そのパラダイムが上段上から2行目の「多くの反例が示されて」下段の1行目の「信じ込んだものから自由になる」のです。以上を字数に気をつけてまとめましょう。
問題2は解答らんには「と考えられる。」とあり、「当たり前」という言葉を必ず用いること、という指定があります。問題文P4の上段3行目の「しかし~」の部分を35字以内になるようにまとめます。「当たり前のことでもみんな異なる意見があり、最終的な答えを知らない」とするとよいでしょう。
問題3は例年どおり〔手順〕が示されていて400字以上500字以内で書くというものです。字数は2020年度までの字数に戻りました。手順1は具体例を用いて「思い込み」について書きます。天動説から地動説への変化でわかるとおり、従来の見方や考え方を信じ込んでいると、そこから自由になることがとても難しいということです。手順2はP3の上段の後ろから4行目にあるように「人々と言葉を交わしながら、ゆっくり、じっくり考えることによって、自己と世界の見方を深く豊かにしていく」ことができ、下段の5行目にあるように「参加者をつなぐもっとも大切なものになる」のです。そして手順1、2を関係づけながら自分の考えを書くわけですが、ここで体験か具体例を入れましょう。学級会でいろいろな意見を聞いて自分とは違う考え方がることを知り、よいものを考えられたというもので十分だと考えます。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は昨年同様小問2題の構成で、さまざまな図形について考える問題です。1題を解くのにかかる時間が長く、難易度は昨年と変わらず高い問題でした。
問題1は、指定された素材からカードを作るとき、なるべく素材を無駄にせずに作成する場合どれだけのカードを作れるか、その際の余った素材がどれだけになるか、などを考える問題でした。与えられた素材から、指定されたものをどれだけ作り上げるか、という発想の問題は、過去の都立中の適性検査でも出題されたことがありますが、解法の方向性を自分で考える必要があり、会話文を正確に読み取る力や基礎的な計算力も求められました。また、ただ答えを求めるだけでなく、それを説明する記述力も求められ、限られた時間の中で解き切るのは困難な問題でした。
問題2は、正三角形を6枚組み合わせた形を転がす問題でした。問題用紙の中にある図を用いて実際に書き出す作業を行いながら答えを考える必要があります。条件に合う複数のパターンのうち、(1)は1パターンだけ試せば良いので正解しておきたい問題、複数のパターンを検証する必要があった(2)は、時間内に解き切るのは難度の高い問題といえます。

【大問2】
大問2も昨年同様、小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。また、きっかけとなる話題も昨年の林業に引き続き第1次産業を取り上げています。
問題1は、魚の保存方法と気候を関連づける問題で、問題2は、3つの穀物の栽培に適した気候を考えさせる問題でした。また、問題2では3つの穀物から2つを選んで解答させるという昨年同様の3つの資料から、2つを選んで答えをつくる形式が踏襲されました。問題1・問題2とも、降水量と気温に注目する問題でしたので、思考の方向性を変える必要がなく、出題形式や問われている内容もオーソドックスであり、受検生には取り組みやすい問題でありました。

【大問3】
大問3は石けんと洗剤の汚れの落ち方を調べる実験を題材にした問題です。基本的な知識をもとにして、汚れの程度を観察結果や汚れの粒の数や重さ、加えた洗剤の量をもとにして思考判断し、理解したことがらを適切に表現する力が問われる問題です。実験結果を比べて特徴をつかんだり、数量の変化をとらえて説明したりする内容です。水溶液の濃さの考え方を活用する問題も含まれました。昨年に引き続き、小問2問でしたが各小問は2つの設問からなり、実質4問の構成でした。4問中3問が記述式の解答形式となっており、1題は計算により油汚れを落とすのに必要な洗剤量を求めるものでした。全体的に問題の文章量が多く記述量も多いので、問題内容の把握と答案の作成に時間がかかったと思われます。

適性検査Ⅰ

【出典】
文章1:田村高志「リノべ―ション・オブ・バリュー 負からのマーケテイング」第二章による
文章2:雨宮国広「ぼくは縄文大工 石斧でつくる丸木舟と小屋」による

【出題形式】
文章を読んでその内容に関する問題を2題解き、問題3として作文を書く、という形式は変わりませんでしたが、2016年度を最後に、姿を消していた二つの文章を読むというスタイルが復活しました。ただ、字数は2020年度が3000字以上と長かったのに比べ、2021年度は二つの文章を足しても2800字程度であり、内容も読みやすかったと考えられます。

問題1は、「無駄」とされる行為が生まれてきた、ということを文章1の具体例を用いて60字以内で説明する問題です。直前にある「技術の進歩によって便利な道具が開発されるたびにそこに掛けていた労力は省かれ」と、直後にある「時刻表」の部分を丁寧に読むと答えが見えてきます。答えはp.2の最後の段落の『現在、当たり前のように使っているモバイル端末、そのなかに存在するウェブサイト・アプリは、何かしらの「手間をかけていた行為に対して、最小の労力(コスト)で達成できるため、生産性からみたら圧倒的に優れた代替品であるといえる。仮に、数年前の自分の行為を客観的にみたときには、「なんて無駄だらけなのだろう」と思うだろう。それだけ技術の進歩が「無駄」な行為を生んできた』の箇所が使えます。ただし、「具体例を用いて」という条件がありますので、具体例を入れるのを忘れないようにする必要があります。「時刻表を使っていたけれど乗りかえ案内サービス」というアプリが出来たので、時刻表が無駄になった」という趣旨の答えになります。
問題2は、「文章1で書かれている「無駄が秘める価値」が、文章2では何に多くの価値があると述べているかを文章2で多く使われている「労力」という言葉を使って説明する問題です。p.2の上段に「労力をかけず最適な解を出すといった生産性からいうと、本で調べるという行為は全くもって「無駄」な行為といえるだろう」という部分があります。この本(ここでは時刻表)にあたるのが、文章2では「石斧」ということになります。「石斧は無駄な労力をたくさん使うが、森羅万象の営みを感じ、人間の欲望に歯止めをかけ、生態系を丸く収めるという価値がある。」というぐあいにまとめるとよいでしょう。
問題3は、「手間がかかる「無駄」な行為で価値を秘めているような具体例を考え、その価値がどのように生み出されるかについて300字以上400字以内で書かせる問題です。今までは400字以上500字以内で書くという形式だったので、100字程度短くなりました。問題2がやや時間がかかるものなので、それを考慮したものでしょう。手順が示されているのは今までどおりです。「手順1は手間がかかる「無駄」な行為の具体例を書く。手順2では手順1で書いた具体的な行為がどのような価値を生み出すかを書く。手順3では手順1で書いた行為が手順2で書いた価値を生み出すのはなぜかを書く」というもので、このままの順番で3段落構成にするとよいでしょう。具体例としては「きれいな景色を写真にとろうと思ったけれどスマホを忘れたので、時間をかけてスケッチをしてみた。そうしたら、その時間が楽しくて、自分が絵が好きで得意だということもわかった」とか「算数が苦手な友人にずいぶん時間をかけて教えてあげたことが自分にとっては結構時間の無駄のような気がしたけけれど、他人に教えることで自分の理解がすすんだ」というようなもので十分だと考えられます。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は、倍数・約数の決まりを使い、整数の成り立ちについて考えさせる問題でした。
問題1は、規則的に並んでいる整数の和を工夫して求める問題でした。九九の表の中から、ある決まった和になる範囲を見つける問題です。6つの数をそれぞれA~Fの記号に変え、その記号を使って解法を説明しなければなりません。ただ答えを求めるだけでなく、その求める過程を分かりやすく説明することが大切です。適性検査の問題を解きなれている生徒にとっては、それほど難しい作業ではないと言えるでしょう。
問題2は、かけ算の式に必要な数を、サイコロの面に当てはめる問題でした。九九の表の中にある数を、かけ算の式で表し、さらにそれらをサイコロの面に書く問題です。1~7までの数を式に必要なだけ取り出せるように、6つのサイコロに分けて書かなければなりません。また、その数を書くときの向きも正しくする必要があります。立方体についてたくさん練習してきたかが問われたと言えるでしょう。

【大問2】
大問2は、木材(林業)をテーマにした問題でした。林業に関するさまざまな資料から、林業が抱えている問題点と解決策について、自分なりの考察を加えていく問題でした。会話や資料から読み取ったことに基づき、自らの考えをわかりやすく伝える能力が試されました。2021年度は、例年と異なり小問が3題から2題になっていました。そのため、大問2にかける時間も例年より短くなったと思われます。
問題1は、資料を読み取り、記述する力をみる問題です。与えられた資料(図2)から、今後持続的に木材を利用する上での課題を読み取り記述する問題でした。ただし、「会話文や図1の人工林の林齢と成長に着目し」との条件がついていましたので、読み取る方向性は1つにしぼられます。
問題2は、複数の資料の関連性を考え記述する力をみる問題でした。与えられた3つの資料から2つを選び、それぞれの資料がどのような立場の(人々)の取り組みで、その2つの取り組みが「間ばつ材利用の促進」にどのように関連しているかを説明する問題でした。2つの資料の選び方によって、解答の作成のしやすさが分かれる問題でした。

【大問3】
大問3は、磁石の性質を題材にした問題です。実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。問題1は、磁石の性質を利用し、磁石のついた鉛筆を鉄板の上に置いてある磁石の上で浮くかを例の図から考察する問題でした。
問題2は、すでに行った実験とおもりをつり下げることができる最大の重さと、1辺3㎝以下の正方形ではシートの面積に比例することから、つり下げられる重さとおもりの個数を考察する問題でした。2021年度は問題3がなくなり小問が1題減りました。

適性検査Ⅰ

【出典】
吉田将之「魚だって考える」による

【出題形式】
文章を読んでその内容に関する問題を2題解き、問題3として作文を書く、という形式は変わりませんでしたが、問題2が2題に増え、南多摩では初めて記号問題が出題されました。また、文章量は3000文字以上と一つの文章としては、今までで最も文字数の多い文章でした。しかし、口語体を織り交ぜながらの語り口はかなり読みやすかったと考えられます。
問題1は、「ウキに対して定位反応を示す」という本文中の傍線部について、キンギョがとった具体的な行動と目的を答えさせる問題です。「定位反応」の説明は、10行ほど前にはっきり書かれており、「これを定位反応という。最大限の情報を得ようとする行動である。」と目的も書かれているので、その箇所をまとめればよいと考えられます。
問題2は、本文の実験を続けたと仮定して、黄色いウキを浮かべるとキンギョがどんな反応を示すか想像する問題です。本文に示されているグラフを正確に読み取った上で、どうなるのかを記号で選ぶ(1)、その理由を45字以上55字以内で答えるのが(2)という構成になっています。本文の説明を正しく読み解いていれば、キンギョは赤と青のウキにはなれているため最初からつつくが、時間がたつにつれてつつく回数は減る、ということが分かるはずなので、選択肢はしぼりやすかったはずです。その理由ですが、「けいかい」という言葉を使う、という条件があります。これは条件というよりむしろヒントで、本文中に「お、いつものと似ているけど色が違うぞ。とくに警戒するほどでもなさそうだが、じっくり調べてやるか」とあるので、ここをうまく使います。ただ、きちんと説明されていなければならないので、要約の力が必要です。
問題3は、「あなたが興味をもち、本やインターネットなどで得た知識をもとにして、実際に見たりふれたりしたことでより深く理解できたあなたの経験」について400字以上500字以内で書かせる問題です。手順1・2が示されており、その順で書かないと大幅に減点、または0点になってしまいます。例年の南多摩中の作文問題と同様、自分の考えや体験を示す必要がありますが、どう理解が深まったのか具体的に書けているかどうかが、差になります。おそらく科学的な実験で調べた知識以外に分かったことを具体的に書く必要があるでしょうから、事前にある程度内容を準備していないと難しかったと思われます。

適性検査Ⅱ

【大問1】
大問1は割り算の余りに注意しながら、約束・ルールに従って作業する問題です。
問題1は縦50cm横40cmの画用紙6枚を、縦2m横1.4mのパネルに規則的に貼るときの、はしと画用紙、画用紙と画用紙の間の長さを答える問題です。
問題2は横向きの画用紙38枚と縦向きの画用紙21枚をパネルの両面に約束通りに貼ったときに必要なパネルの枚数を答える問題です。
問題3は正八面体の辺上をさいころの目と〔ルール〕に従って進み、ゲームが終わったときの点数を答えさせたり、ある得点になったときの目の出方を答えさせたりする問題です。
特別な解法や知識は必要ありませんが、問題をよく読み、決まりに従えるかがポイントになります。

【大問2】
大問2は、乗合バスに関する資料から、自分の考えを書く問題でした。解答はひとつに限られず、自分の考えが論理的に説明できているかが問われました。
問題1は、乗合バスの合計台数の移り変わりや乗合バスが1年間に実際に走行したきょりの移り変わりを、乗合バスに関する主な出来事と関連付けて自分の考えを書く問題でした。
問題2は、ノンステップバスの設計の工夫にはどのような役割が期待されているのか、自分の考えを書く問題でした。
問題3は、「バス優先」の車線や「公共車両優先システム」の課題について、資料をもとに自分の考えを書く問題でした。

【大問3】
大問3は、車の模型を動かす実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。会話文をよく読み論理的に考察する力が問われました。
問題1は、プロペラとモーターとかん電池を組み合わせた車の模型の重さについて、プロペラを回す前後の重さをそれぞれ計算する問題でした。
問題2は、モーターの重さやプロペラの長さの組み合わせによって、車の模型の速さがどのように変化するかを実験結果から考察する問題でした。
問題3は、ほを立てた車に角度を変えて風を当て、車の動きに関して考察する問題でした。

適性検査Ⅰ

出典:安野光雅「かんがえる子ども」による
出題形式:文章を読んでその内容に関する問題を2問解き、問題3として内容にかかわる作文を書く、という形式です。以前、「文章1」「文章2」と2つの文章を読む形式の出題もありましたが、平成29年から一つの文章を読んで答える形式にもどり、本年度も文章は1つだけでした。
内容:問題1は、「テレビや新聞でこういっていた、などと自分の意見はなく、ただただ人のいうことを本気にするのはよくない」という本文中の内容から、ではどうするのが良いのか、筆者の意見を書くという問題です。明確に「~すれば良い」と書かれている箇所はないので、本文にそって考えます。文章の題が「かんがえる子ども」で、考えることによって自分の意見を持つことが望ましいということが何度も書かれていますから、「(情報の)判断を他人に任せず、自分で考える」といった内容になります。
問題2は、「本が語っている『ほんものの様子』を、実際に見にいったらいい」と筆者が述べている理由を書かせる問題です。これは直前に建築家の安藤さんの話を例に挙げて「自分でいろいろなことをつかみとっていく。そして実際のものから勉強する、それが学びである」とありますから、ここを参考にして答えをまとめます。
問題3は、「本を読むことは、自分の考えかたを育てること」と筆者が言っていることの理由を本文の内容にそって書いた上で、本を読むこと以外で「自分の考え方を育てる」にはどうしたらよいかを体験をもとに述べる作文です(400字以上500字以内)。手順1・2が示されており、その順で書かないと大幅に減点(または0点)になってしまいます。例年の南多摩中の作文問題同様、自分の考えや体験を示す必要があります。おそらく「なるべく多くの人と会って対話をする」など、コミュニケーション重視のもの、「異文化の中で暮らす」「新しいことに挑戦する」など自身の体験に関わるものなどが適した内容だと思われます。

適性検査Ⅱ

大問1は、会話文中のさまざまな条件を読み取り、作業する問題でした。
問題1は、1枚の紙を折ってしおりを作成する際、紙を折る前後で各ページの位置と各ページに書かれる文字の種類と向きを問う問題でした。
問題2は8×8のマス目に模様を書いた際、模様の表現の仕方についての約束を読み取り、条件に当てはめる問題でした。
問題3は、立方体にかかれたマス目の上を、すごろくのようにおもちゃを動かす手順を考える問題でした。各小問の難易度は高くありませんが、それぞれの小問の問題文が長く、条件を速く正確に読み取った上で、丁寧に作業する処理能力を問われた問題でした。
大問2の問題1は日本人の出国者数と、日本への外国人の入国者数の移り変わりを表すグラフからわかることを考察する問題でした。
問題2は外国人旅行者が増えている地域の具体的な取り組みを資料から考察する問題です。
問題3は案内図記号の役割を考察する問題で、昨年度と比べて解きやすい問題が多く易化しました。
大問3は「紙の性質」についての問題でした。
問題1が「和紙とその他の紙の吸った水の重さを比較」をする問題で、昨年度と同様に単量当たりの数字を求めて比較します。
問題2は「紙のせんいの向き」を実験結果から推察する問題です。実験結果をどのように判断すれば良いか会話文で説明されていました。
問題3は「のりを作成する最適な水の重さ」について考察する問題です。すでに行った実験の結果から、次に行う実験の結果の仮定を考えて、目的とする水の重さを考察します。いずれも実験結果を読み取る力を必要とする問題でした。

適性検査Ⅰ

出典:平木典子『アサーション入門―自分も相手も大切にする自己表現法』による

出題形式:昨年度(29年度)と同様に1つの文章を読んで答える形です。問題数も昨年度と同じく、小問2題に作文1題の3題でした。
内容:文章は「自己表現」について述べられています。文章の難度は昨年度と同じ程度ですが、構成的には昨年度のものよりも読みやすいものでした。問題1・問題2はどちらも読解問題で、文中の抽象度の高い表現や比喩について説明をする問題でした。どちらも文字数が30字前後であり、昨年度は60字程度2問と比べて、今年度の方が、時間的に余裕があったといえるでしょう。作文の出題形式は昨年度のものが踏襲されており、書き方の条件が多く、指示に従うことにより構成が組みあがるため、書きやすいものでした。
文章中で述べられている「アサーション=自己主張をしつつも他者のことも考慮し、相手と意見を近づけていく」方法について具体的に書くという都立中の中では珍しい形の作文ですが、旧来から南多摩中では他の都立中よりも体験に重きを置かれたものが出題されているため、伝統に則った出題とも言えるでしょう。同校の過去問を遡って解きこんできているかどうかで点数が分かれる問題でした。

適性検査Ⅱ

大問1はさいころを扱った問題でした。受検生にとってはなじみ深い題材です。
問題1は展開図を書く問題で、実際にさいころの面のスケッチを描くものです。問題2はさいころの目を使って式を立てる問題でしたが、ルールに従うことができれば答えることは簡単です。問題3は鏡に映したさいころについて考える問題です。6の目以外が4個ずつ映ることに気が付けば正解にたどり着ける問題です。
大問2は「日本のくらしと変化」をテーマにした問題で、昨年同様、小問は3問でした。
問題1は距離の違いによる高さの見え方の変化について考察する問題、問題2は東海道新幹線の路線の沿線の都市と人口、または工業地帯の関係性について考察する問題、問題3は割合の計算を行い、その計算結果をグラフに表し、その結果の数値を資料と関連させて考察する問題でした。昨年と同様に基本的な問題ですので、資料を読み取って考察する力と割合計算のスピードと正確性が重要なカギとなりました。
大問3は「花粉や黄砂の測定結果」について考察する問題です。
問題1が「花粉を顕微鏡で観察し、花粉の数を求める」問題で、単位量当たりの計算を必要とします。問題2は黄砂を観測する装置の仕組みの説明から、計測結果を考察する問題です。初めて知る観測装置なので、会話文や図を読み仕組みを理解する力が必要です。問題3は「日本で黄砂が観測される原因と気象状況の関連」について考察し記述する問題です。身近な話題ですが、問題文や資料から観測の方法や分析の仕方を読み取る力が必要な問題でした。

適性検査Ⅰ

出典:
茂木健一郎『最高の結果を引き出す質問力』による

出題形式:昨年(28年度)・一昨年(27年度)と2つの文章を読んで答える形式でしたが、今年は27年度以前の、1つの文章を読んで答える形に変わりました。また、条件をつけて言葉の説明を行う問題1、作文の問題2という問題構成から、問題3までの構成に変わりました。
内容:文章は「質問すること」について述べられています。文章の難度はそれほど高くなく、昨年度のものより読みやすくなったといえるでしょう。問題1、問題2はどちらも読解問題で、文字数が60字前後でした。昨年度が同じ程度の文字数の読解が一問でしたので、それよりも速い情報処理が求められていました。作文は以前よりも書き方の条件が多く、指示に従うことにより構成が組みあがるため、例年よりも書きやすいものだったといえます。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成でした。大問1は「図形」がテーマで、立体の見方・対称性・規則性を見つける問題です。簡単な例を具体的に書き出して、作業をする中で解答を導き出していけるとよいでしょう。特に問題1は必ず得点したいところですが、同じ大きさの正三角形を答えるというようなミスは禁物です。問題2は、Aグループの枚数が(3の倍数+1)、Bグループが(3の倍数)になっていることに注目し、その差の1は3本の対角線の交点がある「き」の三角形であることに気が付ければスピーディーに解答にたどりつけます。問題3は問題文の誘導に従って規則性を検証する問題です。
大問2は「野菜の栽培と流通」をテーマにした問題でした。昨年同様、小問は3題でしたが、「資料を分析・考察し、記述する問題」と「割合を計算する問題」が出題され、一昨年と似た傾向でした。資料を読み取って考察する力と割合計算のスピードと正確性が勝負の鍵でした。
大問3は「時間を計ることを題材にした理科実験」を考察する問題です。問題1が「太陽、ふり子、ろうそく」のいずれかの法則から時間が計れる理由を記述する問題で、教科書範囲の知識が必要とされました。問題2は実験結果を考察し、比例の関係を導く問題でした。問題3は対照実験について考察する問題でした。いずれも、決して目新しいものではなく、あわてずに考えれば正解にたどり着ける問題です。

適性検査Ⅰ

出典:
文章1 西林克彦「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」による
文章2 竹内薫「99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」による
出題形式:1つの文章の要旨を読み取らせ、作文を課していた例年とは異なり、要旨に関連のある2つの文章を読ませ、その関連性を説明させたうえで作文させる出題形式に変わりました。とはいえ、昨年の問題も文章のあとに文章の内容を補完する会話文が加えられていたので、広い意味では2つの文章とも言え、過去問をしっかり解いていた生徒にとってはそれほど大きな変更ではなかったと考えられます。
内容:問題1は、「文章1」で言及されている「わかったつもり」の状態を、「文章2」の中でどう表現されているか50字以上、60字以内で説明する問題です。文章1を丁寧に読むと、「わかったつもり」は、読み手が勝手にわかったと思いこんでいる状態です。共通部分を探すと、文章1の「読み手みずからが構築した」状態と文章2「自分の頭の中にある主観的な思いこみのほうが勝つ」状態が共通していると考えられます。
問題2は、文章1・文章2をふまえて、「わかったつもり」から具体的な経験を通して、本当に「わかった」ことを書きなさい(400字以上500字以内)という作文問題でした。「具体的な経験」を記述させるという内容も、指定の字数も例年通りです。ただし、文章の内容と同じような経験をすることはなかなか難しいことです。そのため、ここでは「調べてみたら自分の勘違いだったことがわかった」という経験から、「自分がわかったつもりになっていないかいつも疑う」ことが大切だと学んだという結論での記述がふさわしいでしょう。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成でした。大問1は「渋滞」を題材にした作業中心の問題で、ルールと条件に従い作業を行えば平易に解答を導き出すことができました。必ず得点しなければならない問題です。
大問2は「資料の読み取り」の問題でした。小問は3つあり、そのうちの1つが「歴史」をテーマとした問題だったため、驚いた受検生も多かったのではないでしょうか。今回の大問2では、3つの小問を通して「資料内容を正確に読み取る」「関連のある事柄を探す」「条件に沿って考える」という力が試されています。取り組む問題を選び、解きやすい問題を確実に得点することが高得点のカギとなりました。
大問3は「アゲハチョウの幼虫のからだのしくみと蛹化する環境についての実験」を考察するものです。資料から幼虫の体のしくみを考える問題が1問、実験結果から結論を導き説明する問題が2問の、小問3題で構成されています。

適性検査Ⅰ

出典:森真一「ほんとはこわい『やさしさ社会』」より
出題形式:例年と同じく問題1,2の2問構成で、問題1が文章の内容をまとめる問題、問題2がその内容を踏まえての意見作文でした。昨年は「調べる手順を書く」だったものが意見文になったので、とまどった受検生もいたかもしれません。しかし内容をみると意見・理由・体験・まとめの形で書ける、練習を重ねている受検生にとっては書きやすい問題だったといえます。
内容:問題1は、相手のことを本当に大切に思って、あえて今きびしく接する「やさしいきびしさ」と、相手を傷つけたり不快にさせたりしないように、全力をつくすことを強いる「きびしいやさしさ」がある、という文章を読み、「やさしいきびしさ」「きびしいやさしさ」それぞれについて60字以上70字以内でまとめる問題でした。問題2は文章の内容を受けて「学習発表会の実行委員」であるたまお君とみなみさんの会話文を読み、まずたまお君とみなみさんがどちらの立場なのかを読み取り、自分の意見を体験をあげながら説明する問題でした。一見やさしそうですが、問題1で間違えると作文で得点することはまず難しいと考えられます。

適性検査Ⅱ

大問3つの構成で、大問1は「うるう年」を題材にした計算中心の問題でした。うるう年の計算法がきちんと説明されていたので、受検生は得点しやすかったはずです。
大問2は会話文形式で、図が5つに表が1つ小問3つで5ページというボリュームのある問題構成でした。話題自体は東京オリンピックをテーマに展開しますが、各小問はそれぞれ人口推移と世代別割合、物価の変化、地図の読み方に関する問題でした。どの問題も資料を読み取れば得点できる問題でしたが、計算・解答では条件があり、それぞれの設問で細かい条件が多く提示されているので、条件を丁寧に確認して答える必要があります。
大問3は「発泡スチロールでできた立体を水中に沈め浮力により水面上へ打ち出す実験」について考察するもので、小問3題で構成されていました。

作文 適性検査Ⅰ

大問1の問題1は、例年同様、資料の読み取り問題でした。問題1は1回当たりの自転車平均利用時間と、資料からどんな目的で利用したのかを推測させる問題、問題2は富山市の平均気温・降水量・自転車利用回数の表から、富山市が日本各地の気候の特徴のうち、どれに当てはまるのか答えた上で、なぜ自転車利用者が減るのかを答える問題でした。問題2では、社会の基礎知識があると有利ではあるものの、表から読み取れていれば、冬に雪が多いために自転車を利用する人が減ることは容易に想像がつくので、得点しやすい問題といえます。問題1の1回あたりの利用時間を出す計算と合わせて、ここは確実に得点したい問題です。
大問2は、図形パズルに近い問題でした。問題1は箱ティッシュケースを切りとれない理由を説明する問題で、いすのならべ方が条件に合わないことを説明させる昨年の問題と同様のものでした。また、切り取れるように段ボールに線を入れる方法を書きこませる問題は、図形の把握能力を試す問題で、慣れている生徒であればすぐ気づいたと思われます。ですので、ここをきちんと解答できたかどうかが合否の分かれ目だと言えるでしょう。
大問3は、実験の計画を書き直し、書き加える問題1と資料の意味を正確に読みとる問題2・3です。例年そうですが、大問3は難易度が高く、正答率は低いと予想されます。ただ、今年は問題1の書き加える条件や、問題2のカイワレの茎が長くなった理由は比較的容易に読み取れますので、しっかり解いてあれば部分点が見込めます。あきらめずに最後まで書ききった生徒が得点できる問題です。

適性検査Ⅱ

今年の作文は、資料や図が追加されるなど表面的には変化したように見えますが、その資料も本文の「注」に過ぎず、おおむね例年通りと考えられます。文章の出典は渡辺茂・著『ピカソを見分けるハト ヒトの認知、動物の認知』です。二題構成で、問題一は文中の「ではハトは一体なにを手がかりとしてこのような区別をしているのだろうか」という問題提起に対する筆者の考えを問う問題です。これは、まさに文章の要旨ですから、要約の力があれば解けるはずです。「区別」というキーワードが重要となりますが、最終段落にまとめられているので、得点できた受検生は多かったと思われます。問題二は、南多摩としては新傾向といえるかもしれませんが、「今関心をもっているが、まだ調べていないこと、試していないことをどのような手順で明らかにしていくか」という、意見を説明するのではなく、実験手順を説明する作文です。ついに、作文で意見を述べる内容がなくなったわけですが、なぜ関心をもっているのか、の説明は必要です。つまり、昨年までの対策がそのまま生きる問題であることに変わりはありません。ただし、ここは例年までの採点基準と変わらなければ、かなり差がつくところでしょう。

ボーダーライン

昨年は一昨年と比較して問題が易化したものの厳しい採点でした。今年はさらに問題が解きやすくなったと考えられるため、通常ですと合格最低ラインは上がると予想されます。しかし、採点が厳しいままだとすると適性検査Ⅰでは、大問の1ができた上で、大問2と3でどれだけとれたかが合否をわけるでしょう。また、作文は傾向が昨年とは若干異なるものの、問題1が解きやすくなっています。そのためこちらも合格最低ラインは若干上がると予想できます。採点基準が例年と同様であれば、適性検査Ⅰが【40%~50%】、適性検査Ⅱ(作文)は【50~60%】で、全体で【55%程度】がボーダーラインの予想です。

適性検査Ⅰ

大問1の問題1は、例年同様、理科分野の基本的な資料の読み取り問題でした。1人当たりの水量が2000年くらいから減少している理由を、水洗便器の使用水量と節水の意識から読みとっていれば正解です。ここは確実に得点したい問題ですね。
問題2は2つの水を使う場面のどちらかを選び、家での一日の水の使用量を調べる方法を説明する問題です。おそらく、アの「おふろとシャワー」がイの「調理(食器洗いを含む)と飲用」より答えやすいと思われます。
大問2は、いすのならべ方が条件に合わないことの説明、ならびに条件に合うならべ方を答えさせる問題でした。ここをきちんと解答できたかどうかが合否の分かれ目だと思われます。ただ、条件を書き出して考えればそれほど難易度が高いとはいえません。 大問3は、資料の意味を正確に読みとる問題です。ゲンジボタルの幼虫が陸に上がってきた日の特徴を具体的にグラフから読みとります。問題1は降水量と気温の変化について書けていれば合格ですが、問題2はあまり目にしたことのないグラフから、わかることを図を使って説明しなければならないので、かなり正答率は低くなると予想されます。
以上のように、全体を通して資料の読み取りと、数理処理力と理科の基礎力が問われる内容になっています。

適性検査Ⅱ

概ね昨年と同様の傾向でした。文章の出典は日高 敏隆・著『春の数えかた』。二題構成で、問題一は筆者にとってなぜ2月が特別な月なのか、理由を説明させる問題です。
これは文章の要旨にもかかわる部分ですので、要約の問題に近いといえます。昨年と一昨年のように文中の言葉を説明させる問題ではありませんが、文章中から要素が取り出しやすいので、得点できた受験生は多かったと思われます。問題二は題が決められているのが今年の特徴です。ただ筆者と同様に身近な自然に「目をこらし」て、あなたが発見したことを書くという条件は、体験から書き始めるという点では昨年までと変わりません。
また、指定された題の「冬から春へ」は条件というよりも作文のヒントです。冬から春へと季節の移り変わりを感じさせる自然現象をまとめればよいのです。

ボーダーライン

昨年は問題が難しかっただけでなく、大変厳しく採点されていました。今年は問題が多少易化したので合格最低ラインは上がると予想されますが、採点が厳しいままだとすると適性検査Ⅰでは、大問の1ができた上で、大問2と3でどれだけとれたかが合否をわけるでしょう。 また、作文は傾向が昨年とは若干異なるものの、比較的書きやすい題でしたので、こちらも合格最低ラインは上がると考えられます。適性Ⅰが40%~50%、適性検査Ⅱ(作文)は50~60%で、全体で50%程度がボーダーラインの予想です。

適性検査Ⅰ

大問3題構成。大問1ではタンポポを題材に資料分析力・考察力を見たり、条件を考察して課題を解決する力を見たりする問題が出題されました。問題1では例年通り、複数の資料を読み解く問題が出されました。これまでは3つ以上の資料を重ね合わせていましたが、今年は2つの資料を重ねて読み解くだけだったので、記述しやすい問題だったと思います。大問2はペットボトルのリサイクルを題材に、分析する力や数理的に考察する力・表現力をみる問題でした。
大問3は、江戸時代に使われていた時刻の表し方に関する文章を読んだ上で、「お八つ」の時刻が最も遅い月を求める問題です。「月」・「『お八つ』の時刻」・「求め方の説明」と答える項目が3つあり、正解しきるのは困難で最後に回すべきでした。端数の処理について指示があり、指示に従うと誤差の累積のために、求め方次第で算出時刻が変わってしまいます。別の方法で検算をした受検生は迷ったかもしれません。すべて計算すると膨大な時間を要するため、候補を絞りこむ力が求められます。ただし、問題2は江戸時代に使われていた日時計の写真を見て、使い方を推測、説明する問題で、指定語句があり、推測も容易でした。

適性検査Ⅱ

2012年度は1800字程度の文章でした。単なるエッセイではなく、物事を「理解」するということの本質とは一体どんなことなのか、そしてそれが人間にとってどれだけ重要なのかについてまで言及してあるため、内容を捉えるにはかなりの読解力が必要でした。
問題1は本文で特別な意味で使われている「理解」という言葉を、「対象」「整理」という言葉を入れて50字以上70字以内で説明させる問題です。昨年まで文字数は40字~60字でまとめる形でしたので多少長くはなりましたが、それほど変わっているとは言えません。また、傍線の箇所について記述させるといった形式にも変更はありません。さらに、ある決まった言葉を使わなければならない、という条件も同じでした。
問題2は例年と同様に具体例をあげた上で、自分の意見を書く作文です。字数制限も400字以上500字以内と同じでしたが、「何かをつくり発表した」ということが前提となっていたため、そこは若干の違いがありました。南多摩の適性検査Ⅱは、さまざまな説明文に触れ、内容を要約したり、文章問題を解いたりすることが対策になります。従って、単に読書が好きで小説を読んでいるだけでは不十分です。
新聞記事や説明的文章に日頃から親しみ、速く正確に読み取る力をつけておきましょう。そうすることで合格点をとれる作文を書けるようになります。