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2025年度適性検査分析速報-武蔵高等学校附属中-

投稿日: 2025.02.3 5:45 pm

 

 

2025年度 武蔵高等学校附属中 適性検査分析速報

 

 

適性検査Ⅰ

【出典】

文章1 小島 渉『カブトムシの謎をとく』(一部改変)

文章2 恩田 陸『spring』

【出題形式】

2つの文章に対して、読解問題が2問、作文問題1問という形式は昨年度と同様でしたが、文章については最近出題されていなかった小説文が採用されました。読解問題では、解答欄に合うように答えを抜き出したり、文書をもとに空欄の内容を補う問題で昨年度と同様の形式でしたが、2つの文章内容について話し合う会話文が記載されており、それが2問に大きく関わってくるものになっていました。これまでもこのような会話文が組み込まれることはありましたが、作文ではなく読解の方に関わってくるのは初めての形式でした。

作文問題については、字数は400~440字以内で、段落ごとに書く内容についての指定はなく、問いに書かれた条件をもとに書いていくという、例年通りの形式でした。ただし条件の中で、文章と「会話」の内容をふまえるという指示があり、読解・作文ともに文章と会話の理解が重要なものであったといえます。テーマは自分にとっての「謎」を解決するために、どのような取り組みをするのかというものになっており、ena生にとっては書きやすいものであったと言えるでしょう。

 

〔問題1〕会話文にあてはまる適切な語句を文章から抜き出し記述する問題

会話文中の空欄を、文章1の言葉を抜き出して補充する問題でした。初めて見るタイプの問題でしたが、内容は文章1の「柴田さん」はどうやって謎を解こうとしていたのか、読み取るだけの問題で容易でした。探すのにやや時間がかかった受検生もいたと思いますが、柴田さんが謎を解こうとする行動を説明している部分に注目すれば、答えにたどりつきます。落ち着いて確実に正解しておきたい問題でした。

 

〔問題2〕空欄にあてはまる語句を文章内の表現をもとに考え記述する問題

会話文内の人物が文章2の登場人物の気持ちについて述べており、その気持ちがどのようなものか、空欄に適切な言葉を補充しながら説明する問題でした。特徴のある問題指示として、「文章2の中の一続きの表現をもとにして」というものがありました。「一続きの表現」なのでいくつかの文に解答の候補がまたがって述べられていると考えることができます。文章2の中から注目すべき表現を見つけることは難しくありませんが、解答欄に合うように限られた字数におさめて答えを作る必要があり、そういう意味で差がつく問題であったと言えます。

 

〔問題3〕作文問題(400字以上440字以内)

自分にとっての「謎」とは何か、またそれを解決するために、どのように取り組んでいるか、あるいは取り組んでいこうと考えているか、四百四十字以内で書く問題でした。文章1と2、そして会話文の内容も踏まえて内容を考えていく必要がありました。弊社の日曜特訓や過去問で演習を積んできた生徒にとっては、文章1・文章2・会話はそれぞれ別個の内容を述べているのではなく、「自分が解き明かしたいと思うことを解決する行動として、継続して何回も取り組むという要素」が共通内容であることは容易に読み取れたはずです。これを踏まえ条件に従って構成を考えると、「謎を解決するための行動」としては、「継続」「繰り返す」といった要素を満たさなければなりません。テーマについても、enaの受検生にとっては今まで何回も練習してきたものであり、昨年度より書きやすいものだったといえます。

 

適性検査Ⅱ

1 立体図形を題材にした問題

前年度同様に小問2題の構成でした。立体図形をテーマにした『算数』に近い問題で、記述形式の解答がありませんでした。そのため、例年と比べると取り組みやすい難度の問題になっていました。過年度の適性検査Ⅱでは、時間内に全部を解ききるのが難しく、結果的には大問1の正否がそこまで合否を左右しない年度もありましたが、今年度は一転して、しっかり解き、正解しきることができたかどうかの勝負になったと言えます。

 

〔問題1〕は立体図形の展開図から面積を求める問題です。これまでの都立中の適性検査からすると珍しく、「算数」を前面に押し出した問題で、計算力が問われる内容です。辺の長さを求めるのに必要な情報を会話文から読み取ることや、辺と辺のつながりや小数の四則演算など、基本的な項目を速く正確に行う力があれば、例年に比べて難度は低い問題でした。必答問題です。

 

〔問題2〕は立体図形を指示通りに組み立てる問題です。立体図形を様々な視点から見る「投影図」の考え方が必要です。2種類の図形のうち、1種類の図形のみあてはまる箇所に気づくことができれば、解答を絞ることができたと思います。こちらも、例年に比べて難度は低く、こちらも必答問題です。

 

​​2 日本の歴史を題材とした問題

昨年度と同様、歴史分野からの出題でした。今年度は〔問題1〕から〔問題3〕まで答える項目や使う資料を選択した上で解答を作る問題でした。短い時間で書きやすい項目、資料の組み合わせを考えることが重要でした。いずれの問題も会話文の量は多くなく、全体的な難易は昨年度と同様といえるでしょう。

 

〔問題1〕は奈良の大仏・鎌倉の大仏のいずれかを選び、その建造について会話文と資料をもとに説明する問題です。大仏建造の材料である銅の産地と社会の様子にふれながら記述をすることが必要でした。「世紀」の意味など、小学校で習う範囲の社会の知識は必要でしたが、与えられた資料は複雑ではなく、また会話文にも用いるべき情報がわかりやすく書かれているため、平易な問題でした。

 

〔問題2〕は江戸時代の武家地・町人地の人口密度を求め、比較をしながら武士または町人の生活について考えられることを答える問題でした。近年、割合計算をする問題の出題がありませんでしたが、昨年度から復活しています。会話文から武士の生活に関することがほぼ読み取れないため、「江戸の町は本格的なにぎわいをみせるようになり」「江戸の町は拡大を続けている」といった会話文の内容をもとに、人口密度が武家地よりも高い、町人地に住む町人の生活を選んだほうが解答しやすかったといえるでしょう。

 

〔問題3〕は資料4~7から二つ選び、高度経済成長期における東京都民の暮らしの変化について説明する問題です。いずれの資料も会話文中の先生のセリフで内容が具体的に説明されているため、会話文と資料を照らし合わせながら記述をしていくことがポイントでした。組み合わせる資料同士の関係性を読み取るに必要がありましたが、それすらも会話文の中で言及されているため、取り組みやすい確実に得点したい問題でした。

 

3 シャボン玉の性質について考える問題

近年の傾向通りの問題ですが、例年よりも会話文が少なくなり、実験の手順の説明が詳細化されました。これまでであれば実験結果の着眼点を示唆するだけであったものが、それに加えて検証の仕方まで示唆されるものとなっており、大幅に解きやすくなったと言えます。しかし、思い込みなしに丁寧に問題文を読み取らないと、読み取り方が間違いやすい箇所があり、落ち着いて処理できたかどうかが正否を分けました。適性検査Ⅱの共同作成は、算数系の大問1の方が難度の高い年度と理科系の大問3の方が高い年度がありましたが、今年は全体的に難度は下がったものの、解答の記述量の面で、大問3の方が比較的難度が高かったと言えるでしょう。

 

〔問題1〕はシャボン玉をつくる液体に加える砂糖の分量によって、シャボン玉の割れやすさがどう変わるかの実験についてです。実験結果の着目すべき箇所を条件に従って見つけ、その箇所に着目する理由を述べる問題でした。着目すべき箇所自体は、単純な数値の読み取りのため平易ですが、表で示されているものは、問われている「体積」そのものではないため、解答の仕方に注意する必要があります。減点とならずに、点を取り切っておきたい一問です。

 

〔問題2〕はシャボン玉の時間経過による割れ方の実験についてです。まくをつくる液が、時間経過で下にたまることで、上部がうすくなり、割れることが実験で示されています。その結論自体の読み取りは誘導が丁寧なために難しくありませんから、条件通りに解答を書くことができたかどうかが点数を分けるでしょう。問題文を踏まえた解答の作り方の練習量が正否を分ける一問でした。

 

適性検査Ⅲ

【大問1】図形や場合の数に関する問題
令和6年度は、大問1が例年と異なり平面図形からの出題でしたが、今年は立体図形からの出題に戻りました。〔問題1〕では、仕切りのある容器に入れた水がどのようにたまっていくかを考える問題が出題されました。仕切りの位置を自分で決められるため、計算しやすい設定を作れたかで難易度が変わる1問でした。また、私立算数ではよく出るタイプの問題であり、算数の地力も問われた1問です。〔問題2〕では、模型を作るのに必要な資材の量を計算する問題が出題されました。模型に使う資材の長さを自分で決め、全体を指定の面積に収める必要もあり、時間のかかる1問であったと言えます。〔問題3〕では、最短経路の場合の数を求める問題が出題されました。それ自体は頻出のテーマですが、今回は往復し、しかも往路で通った道は復路では通れない制限があるため、こちらも時間のかかる1問でした。総合して大問1全体では、例年と同等か、若干難化したと言えます。

 

【大問2】気体と熱の伝わり方に関する問題
令和5年度は大問2がほぼ算数分野になる、昨年度は実験の手順を説明する問題がないなど、近年は出題傾向が変化していましたが、今年度は比較的それ以前と似た出題傾向に戻っています。〔問題1〕は、気体の成分と燃え方の関係を、実験結果から読み取り、指定した結果を生むような気体の成分の条件を答える問題でした。基本的な対照実験の考え方で解ける、解きやすい1問でした。〔問題2〕は、太さが一定でない容器で、与えられた道具を用いて、中に入れる気体の量を50%にするための具体的な手順を考える問題でした。実験手順を考える問題として、受検生の多くが対策していた問題と言えます。〔問題3〕は、素材の異なる容器に入れたお湯の温度の変化から、容器の素材を答える問題です。実験結果を読み取って考察していけばよいですが、数値の違いが小さく、それぞれの違いを考えにくい生徒もいたことと思います。総合して大問2全体では、若干易化したと言えます。

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