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2025年度適性検査分析速報-東京大学教育学部附属中等教育学校-

投稿日: 2025.02.3 6:55 pm

 

 

2025年度 東京大学教育学部附属中等教育学校 適性検査分析速報

 

 

適性検査Ⅰ

2024年度は大問数3、小問数17でしたが、2025年度は大問数2、小問数については小問の中で「問1(1)(2)」のように分かれている問題が多数あり、そちらも「一つの小問」としてカウントすると15問となっており、問題数としては減少しました。昨年度の問題と大きな流れは変わっておらず、前半に知識、社会系の問題、後半に読解問題、最後に作文問題という構成になっています。

第1問(大問1)は戦争、核爆弾を題材に、終戦から約80年たつ現在もそれを忘れないようにしていきたいという大きなテーマの枠組みが見え、第2問では、栁田國男の『日本の伝説』を引用し、昔話、および伝説を中心に据えた問題が出題されました。後述する最後の作文問題からも読み取れるのですが、適性検査Ⅰ全体のテーマが「語り継いでいく」や「伝統」という言葉に置き換えられ、昨年は「政治」「人権」というテーマが適性検査Ⅰ全体を通していきわたっているとみられたので、大問数の構成は変わったものの問題全体のつくり方は昨年同様と言えます。ですが、資料量、文章量が昨年度と比べてもかなり減少し、易化したと言えると思います。

 

第1問

【出典】『朝日新聞』1968年3月10日。

【出題形式】記号問題5題、記述問題2題

1954年、ビキニ環礁で行われた水爆実験の影響を受けた第五福竜丸についての資料を挙げながら、それと絡めた歴史上の出来事の並び替え問題、地理的な知識問題が出題されました。特筆すべき点として、問3では北半球を経度0度、90度、180度で区切った簡単な略地図が出されました。これをもとに太平洋の位置を答えるという問題でしたが、日本が東経135度周辺に位置し、かつ日本が太平洋に面していることを覚えていれば容易に解ける問題でした。これまでの東大附属中の問題同様、「知らない」ことでも、小学校での学習範囲内で覚えていることをもとに整理すれば十分解ける問題が出題されています。記述問題は特に、「若い世代の人たちに戦争体験を語り継ぐうえでの課題」は何かという問題で、「80」と「記おく」が指定語句となっていました。特に「80」という数字はここまでの問題や資料の中に出てきているわけではないので、問題のテーマと絡めて、2025年が終戦から80年という事を冷静に導き出せたかどうかが分かれ道になっているかと思います。これも基礎知識として終戦が1945年という事を覚えていて、かつ冷静にその考えを広げることが重要です。

 

第2問

【出典】『日本の伝説』栁田國男、『ポプラディア』第三版

【出題形式】記号問題3題、漢字の書き取りおよび読み取り問題1題、記述問題1題(作文)

『日本の伝説』から、「伝説」と「昔話」の違いとそれに対する筆者の考え方が引用され、『ポプラディア』で伝説と昔話の違いを引用するとともに、さらに「口承文芸」を引用することで、伝承、伝統の話に一般化、派生させるような文章構成でした。設問自体は基本的な比喩表現に関する読解問題、語彙の意味を答える問題などで構成され、素直な問題と言えるかと思います。最後の問6では、「今から50年後、あなたが大人になり、自分の小学校時代のできごとを伝説として小学生に語り伝えるとしたら」というテーマで241字から300字で作文するという問題でした。語り伝えたいこと、その理由を書くという構成も指定されており、広く見て、体験を書く作文問題というふうに捉えるとスタンダードな問題と言えるかと思います。この、語り伝えたい理由については様々なパターンの解答が考えられますが、『日本の伝説』の引用を見ると、伝説は、ただ面白いというより、有名にして、残していきたいという筆者の意見が読み取れるので、そこをもとにすると、自分の体験がただ愉快であったり、面白かったりするから話したいというよりかは、しっかりと残しておきたいという内容(例えば努力した結果の成功体験などの何か教訓的なものなど)が必要だと考えられます。このように文章をもとに作文で書く内容を考えていくというのは、昨年度の適性検査Ⅰの系譜を継いでいるものだと受け取れ、かつ、よりシンプルな問題内容のため、昨年度より作文問題の平均点は高くなっていそうです。

 

適性検査Ⅱ

第1問 大豆の自給率を通して割合を求める力を問う問題
問1
表から数値を拾い大豆の自給率を求める問題です。自給率の定義が問題文に明示されています。計算力と概数処理能力が問われています。

問2
大豆農家の耕作規模の変化を2000年と2015年を比較する問題です。小問が3問ありますが問1と同様な割合計算と単位換算が問われています。昨年の電動車の問題と同様に学校側は割合計算能力を重視していることがうかがえます。昨年度も同レベルの割合計算が問われたが、昨年と同じような難易度の出題がなされたということは受検生間で意外と差がついたのではないかと推察できます。

問3
大豆の平均落札価格を比べる問題ですが最大値と最小値の差が問われているだけで容易な問題と言えます。

問4
落札価格と収穫量が比例することを前提に複雑な計算能力が問われました。第1問は本問の正誤で差がついたものと思われます。

問5
グラフの作成能力が求められました。数値を概数にして座標を取る問題であり短時間で通過したい問題です。

 

第2問 体積を求める計算力を問う問題
問1
立方体、直方体、円柱の体積を求めるだけの容易な問題と言えます。

問2
問1を前提として体積の差が問われています。これも容易と言えます。

問3
昨年に引き続き作図の問題が出題されました。コンパス、三角定規を用いて120度の中心角が求められるかがポイントです。昨年出題された相似の作図と比べるとかなり簡単です。昨年の作図の出来が極めて悪かったと推察できます。

 

3問 月の満ち欠けに関する知識を問う問題

問1は日没の時刻の三日月が見える方向、問2は満月が見える時間帯、問3は日没の時刻の上弦の月が見える方向、問4は下弦の月の形、問5は月が動いて見える理由、問6は同じ時刻に見える月の位置の変化、問7は月の位置が変化する理由が選択式で問われています。適性検査的な出題傾向は弱く基本的な知識がそのまま問われていると言えるでしょう。昨年の誘導電流の対照実験の問題と比べて極めて点数が取りやすい問題となりました。

 

第4問 代表的な水溶液の性質を問う問題 

問1は塩酸とアンモニア水の特色、問2塩酸水溶液の特徴、問3と問4は酸性とアルカリ性とリトマス試験紙の色の変化が問われています。第3問と同様に知識をそのまま問う問題と言えます。適性検査とはいえ教科書レベルの知識は正確に理解し覚えてほしいという学校側のメッセージと言えるでしょう。

 

実技

問1
切り絵の和柄である、A矢がすり、B七宝柄、C麻の葉の模様が特定できるかが問われました。会話文から以下が読み取れます。①平行四辺形は線対称に並んでいる。②正六角形と二等辺三角形の集まり、③円の集まりなどそれぞれの柄の算数的な特色が説明されている。
この数年の算数的な知識を前提として作業をするという傾向にあった出題と言えます。

問2
亀甲柄の作図が問われました。昨年同様に会話文が誘導になっており、指示に忠実に従って作業することが求められていますが、合同なひし形を縦に3つ作図できるかがポイントです。

問3
正六角形が連続する亀甲柄の作図が問われました。製作用紙が配られ、そこに一辺が4cmと3cmの正六角形が印刷されているのでこれをどのように並べればよいのかを考えなくてはなりません。完成図は示されているのでこの図をよく観察してから作業を始めたいところです。一辺が4cmの正六角形の一辺を重ねれば良いことに気が付きたいところです。基本的な作図方法は問2と同様なので問2が正解できたかで差が出たように思われます。

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